岸田文雄首相(65=自民党総裁)は10日、内閣改造と党役員人事を行い、第2次岸田改造内閣が発足した。ウクライナや台湾情勢に伴う外交・軍事問題、新型コロナの感染拡大に物価高…と難題は山積み。さらに、安倍晋三元首相の銃撃事件で、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党議員とのズブズブの関係が暴露され、内閣支持率も低下する中で行われた〝岸田采配〟を、京都大学大学院の藤井聡教授(53)がジャッジした。

 藤井教授はまず、今回の内閣改造と党役員人事について「旧統一教会問題を適切に処理する事を通して、『支持率を回復』するためだと言われています」と指摘。

 しかし、日本は現在、台湾、円安と物価高、電力不足、長期的なデフレ不況、コロナ問題など、実に多くの深刻な国家的問題を抱えており、「こうした対策は遅れた分、事態はさらに深刻化するものであり、内閣改造などやっている暇などないはずです。にもかかわらず、そうした諸問題を差し置いて支持率対策を図るというその姿勢そのものに対して、多くの国民は大いに疑問を感じているところと思われます」と話す。

 旧統一教会対策についても、関与が指摘された議員の多くが外れる一方で、山際大志郎経済再生担当相は留任した。

「これでは、旧統一教会と関係していた閣僚を交代させるが、変えたくない閣僚については変えなかったというダブルスタンダード批判が生ずることが考えられます。また、旧統一教会との関係を完全に断ち切るほどに強い態度を取ることで、逆に多くの旧統一教会との関係者を含んだ内閣をかつて組閣していた岸田氏の責任問題が浮かび上がる事になる。これについて明確な謝罪がなく、ただ『関係を断ち切りました』をアピールするだけに終わるなら、世論の批判をかわすためだけの場当たり的な政権運営だとの批判に対して、適正な説明が難しくなるでしょう」

 藤井教授はかねて、日本が〝再生〟するためには積極財政が必要だと主張している。

「安倍派の西村康稔氏が経産相、無派閥ですが安倍氏と政策思想を共有する高市早苗氏が経済安保相に登用され、萩生田光一氏が政調会長となりました。こうした人事は、安倍派、ならびに積極財政派に一定配慮した人事となっている」とみる一方で、「積極財政を展開するには、財政の要である財務大臣に積極財政派を登用することが必須ですが、緊縮財政派の鈴木俊一氏を留任させている。党人事においても、緊縮財政派の麻生太郎氏を副総裁に留任させていることから、積極財政への転向はしないことが明らかです」と期待薄のようだ。

 緊迫する国際問題への対応はどうか。

「台湾問題が深刻化している今日、外務大臣・防衛大臣には『適切な中国外交』ができる人事が必須ですが、外務大臣については〝親中派〟であるとしばしば指摘されている林芳正氏が留任するという人事になっています。ついては今後、この人事で台湾・尖閣問題が適切に乗り切れるか否かが強く注目される事になります」

 藤井教授は、今回の内閣改造人事の総合的評価について「旧統一教会問題を批判する世論や党内最大派閥の安倍派、現在一大勢力になっている党内の積極財政派に『配慮』した人事である様子が見て取れますが、肝心の『戦後最大の危機』に対処するために適切な布陣かと問われれば、残念ながら、そうとは思えない」とバッサリ。

 一刻の猶予もない問題が迫りくる中、岸田首相は「検討する」を繰り返してきただけに、藤井教授は「あらゆる国家的問題は厳然と我々の目の前に存在しているのが事実です。その布陣が適切か否かとは無関係に、政府にはこの危機に対して適切に対処していただかなければ、日本国家は凋落していく。岸田改造内閣の善処と幸運を、心から祈念したいと思います」と締めくくった。