2020年9月、釧路発関西空港行きのピーチ・アビエーション機内でマスク着用の拒否を巡って客室乗務員にケガをさせ、新潟空港への緊急着陸を余儀なくさせたとして、傷害や威力業務妨害、航空法違反などの罪に問われた明治学院大の元非常勤職員奥野淳也被告(35)の初公判が17日、大阪地裁(大寄淳裁判長)で開かれた。ノーマスクを主張する被告の公判とあって、裁判所は異例の厳戒態勢を敷いた――。
スーツ姿で法廷に現れた奥野被告は落ち着き払った様子で傍聴席と裁判官に深々と一礼。もちろん“ノーマスク”だ。
奥野被告は家宅捜索の際、捜査員に対する器物損壊、千葉県館山市の飲食店でマスクの着用を拒否してトラブルになり、駆けつけた警察官を殴った公務執行妨害などの罪にも問われている。
罪状を問われると、書面を取り出し「私はピーチの誤った判断により飛行機を降ろされた。客室乗務員を威圧したり、暴行していない」などと、時に傍聴席を振り返るパフォーマンスも見せながら“全面無罪”を主張。弁護団も「本件は社会の不理解によって生じた」と疑問を投げかけた。
これまで奥野被告を取材してきた法廷ライターの櫛麻有氏は「いつも通りノーマスクでした。今日は検察側の証人として、被害者の客室乗務員が証言する予定でしたが、ドタキャンになり午前中で終了。奥野被告は書面の読み上げだけでは語り足りないといった感じでしたね」と振り返った。
新型コロナウイルスの感染防止が叫ばれてから2年がたち、ワクチンやウイルスに対する知識も蓄積され、最近はマスク着用の是非が議論されるようになってきたが、ピーチの騒動があったのは第2波がピークアウトしたころ。世間的には「マスクしないとは何ごとだ!」という風潮が強かった時期で、奥野被告の行為は激しく非難された。
一方で、マスク不要論を掲げる人々からは擁護の声も上がり、激しい場外乱闘が繰り広げられた。ただ裁判所は、今でも傍聴席数を制限するなど感染対策に取り組んでいる。この日も“ノーマスク信者”の行動を警戒し、異例の厳戒態勢を敷いた。
数人の裁判所職員が、傍聴券の列に並ぶ人々に対し「不織布マスクの着用に御協力をお願いします」と書かれたカードを示したかと思えば、裁判が行われた地裁2階の大法廷へとつながる動線は、大階段を除いてすべてついたてで封鎖。階段の入り口では、職員が一人ひとりのマスク着用をチェックした。
法廷内では、奥野被告と弁護人の間にアクリル板の仕切りを設置。さらに証言台の周囲3方を高さ2メートルほどのアクリル板で取り囲んだ。これには数々の裁判を見てきた傍聴人からも「ここまでやっているのは見たことがない」と驚きの声が上がった。
公判終了時には、大寄裁判長が「最後になりますが、裁判所としてはフェースシールドの着用を検討いただきたい」と苦言を呈する一幕も。ちなみに弁護団は、みんなマスクを着用していた。
公判後、奥野被告を直撃した櫛麻氏は「奥野被告は『アクリル板は前日に裁判所から連絡があり、反対したが設置された。遺憾だ』と言ってました。通路の封鎖やカードの提示は聞かされていなかったそうです。フェースシールドは非科学的なので、今後もするつもりはないとのことです」。
被告の思いとは裏腹に、裁判所の“感染症対策特別シフト”は判決まで続きそうだ。












