森友学園問題を題材にしたとされ、反響を呼んでいるネットフリックスの配信ドラマ「新聞記者」について、「週刊文春」が先日、〝改ざん疑惑〟を報じた問題で、近畿財務局の元職員である故赤木俊夫さん(当時54)の妻雅子さん(50)が、原作者である東京新聞の望月衣塑子記者と「直接会って話したい」と訴えている。この問題を取材し続けている元NHK記者が、問題の本質を語った。

 森友学園に関する財務省の決裁文書改ざん問題で、俊夫さんに改ざんを指示した佐川宣寿元国税庁長官に、雅子さんが損害賠償を求めた訴訟の口頭弁論が9日、大阪地裁で開かれた。朝日新聞が国有地問題の第一報を打ったのが2017年2月9日。くしくも5年後の同じ日に口頭弁論が行われた。

 この弁論で原告側は、佐川氏とともに訴えていた国が昨年12月に「認諾」したこと受け、賠償金額を550万円から1650万円に増額した。鈴木俊一財務相は衆院予算委員会で佐川氏に負担を求めない考えを示しており、佐川氏も認諾することで真相が闇の中に葬り去られる可能性が否定できないからだ。

 一方、弁護側は従来通り、「公務員は個人の責任を負わない」として、請求の棄却を求めた。

 ただここに来て、別の問題が浮上している。森友問題を題材にしたとされ、反響を呼んでいるネットフリックス配信ドラマ「新聞記者」について、週刊文春が先日、「森友遺族が悲嘆するドラマ『新聞記者』の悪質改ざん」と報じたのだ。

 このドラマは、東京新聞・望月記者の著書「新聞記者」が原案。女優・米倉涼子演じる新聞記者が、権力に屈することなく政府の汚職疑惑をめぐる深い闇に立ち向かうというものだ。

 文春によると、当初は赤木さん夫妻をモチーフに制作を進める予定だったが、雅子さんが「事実をできる限り正しく伝えてほしい」と難色を示すと、〝フィクション〟という形で強引に制作が進められた。遺族の大切なものが都合よく切り取られ、利用され、乗っ取られたとしている。さらに望月記者は、話し合いを望む雅子さんとの連絡を一切絶ち、借りた資料の一部を返却していないなど、その対応に疑問を呈している。

 これに対し、望月氏は8日、自身のツイッターで「週刊誌報道について」と題し、「取材でお借りした資料は全て返却しており、週刊誌にも会社からその旨回答しています。遺書は元々お借りしていません。1年半前の週刊誌報道後、本件は会社対応となり、取材は別の記者が担当しています。ドラマの内容には関与していません」と反論した。ただ、当の雅子さんとは相変わらず音信不通。雅子さんは「直接会ってお話しさせてもらいたいんですが、望月さんとは連絡がつかないんです」と明かした。

 森友問題や雅子さんを精力的に取材してきた元NHK記者の相澤冬樹氏はこう語る。

「望月記者はきちんと雅子さんと連絡を取って説明すべきです。あのツイートでは『雅子さんをウソつき呼ばわりしてる』と取られかねない。安倍政権時の菅義偉官房長官に『すり替えるな。ちゃんと答えろ』と追及していましたが、自身が疑惑を抱かれたことにちゃんと表に出て答えないと。一部からは『望月さんを追及するのは敵を利することになる』などと言われますが、だからこそ、安倍政権と同じことをやってはダメなんです。そういう意味では、望月記者も悪いですが東京新聞はもっと悪い。社としてきちんと事実関係を調べないといけない。善意の仮面をかぶって、事実と違うことをするのは1番悪質です」

「私は真意が知りたい」という雅子さんの思いは、さまざまな思惑に翻弄されてしまっているのか――。