サラリーマンやOLの帰宅時に、駅前で「安くておいしい果物はいりませんか?」と謎の若者のフルーツ売りが数年前から出没しているが、コロナ禍でその数が増えている。しかも、しばしばトラブルを起こすため警察が動きだしている。

「8年前くらいから駅前などに現れ、トラブルになっていたんですが、新型コロナ禍で職やアルバイトを失った若者たちが日給1万円に釣られて急増している。各地の消費生活センターで『買わないでください』と呼び掛けてますが、後を絶たない。一方で、その元締めは詐欺やマルチ商法の疑いがあるので、警察も捜査に乗り出してます」(行政関係者)

 果物の訪問販売は特定商取引の規制対象になっている。だが、自宅や街角、コンビニ前、駅前などで若者から「今日とれた新鮮なフルーツ、買ってくれませんか」と声を掛けられると、買ってあげたくなるのも人情だ。

「季節ごとにミカンやリンゴを売るんですが、試食したらおいしかったので1箱購入し、自宅で開けると半分以上が傷んでいた。領収書もなく、販売元の連絡先も分からない。泣き寝入りするケースが増えている」(同)

 売り子の若者もある意味、被害者でもある。コロナ禍で失業した若者たちがアルバイト情報誌の高給につられていくと、とんでもないことになる。

「ある会社に応募し、朝集合すると、全員揃ったところで朝礼。円陣を組み、笑顔でハイタッチ。『今日も頑張って売ろう』と大声を出す。マルチ商法の会社とスタイルが酷似している。客に売る単価はその場で会社が決め、リーダーを中心にグループになって販売エリアを決め、売りまくる。アルバイトは日給1万円と言われたのに、実際は出来高払いで、数千円が払われるだけというケースが出ている」(警察関係者)

 こうした方法は若者の労働から搾取する“労働マルチ”とも呼ばれ、反社会的勢力の得意とするところ。消費者庁や警察のメスはいつ入るのか。