【アツいアジアから旬ネタ直送 亜細亜スポーツ】ロックダウン(都市封鎖)中のタイでは今、アルコール類の販売が禁止。コンビニやスーパーでも買えない。レストランは封鎖措置によりテークアウトのみの営業で、こちらでもダメ。違反すると最高で禁錮1年、罰金10万バーツ(約33万円)が科される。

「本来なら今はソンクラーン(タイ正月)。誰彼かまわず祝福のため水を掛け合ったり、白い粉を塗り合う。でも今年はコロナのせいで水掛け祭りは中止に。タイ人はみんなガッカリしている」とは首都バンコク在住記者。

 無礼講のソンクラーン時期は例年、アルコール消費量がかなり増える。飲酒運転事故も多発し、昨年のこの時期は約1週間で348人が死亡、負傷者は3176人。今年は水掛けで発散できない分、飲酒が増えて予期せぬトラブルにつながるのを当局が警戒し、異例の酒禁止措置に踏み切った。

「タイではもともと、仏教の祭日や、選挙前日には酒を販売しない決まりがあるが、それも1日だけ。今回はバンコクで10日間、県によっては2週間も続く。それじゃ耐えられないと、市民は販売禁止前日、大量購入に走った」と同記者。

 現地在住の日本人の間でも、酒買い占めの動きが広がった。

「こっちでは3月26日に非常事態宣言が発令。日本よりはるかに厳しい外出制限によるロックダウンで、テレワークが続きストレスがたまっている。せめてソンクラーンの時ぐらいは酒を飲みたかったが…」とは、現地採用で日系製造業関連企業に勤める日本人だ。ただ「自宅にこもるようになってから、明らかに酒量が増えていたから、逆に節酒になってよかったかもしれない」とも。

 ロックダウン下の国々では今、アルコールの過剰摂取が大問題になっている。米国ではトランプ大統領が国家非常事態を宣言して以降、アルコール消費量が55%も伸びていると、米データ会社「ニールセン」が発表。現地では「1時間以内に届けます」がモットーのアルコール配送サイトが大人気になっている。

 オーストラリアでも、人と会う機会がめっきり減ったストレスで酒量が多くなった人が増え、社会問題に。英国でもワイン販売サイトの3月の売り上げが前年同月比1000%に達したと、米誌「ワイアード」が報じた。

 日本も首都圏はじめ各地で居酒屋などが営業自粛中。代わってミーティングアプリ「ZOOM」を使ったオンライン飲み会などがはやっている。自宅だと気が緩むし、コロナ終息の見通しもつかない不安も重なり、外で飲むより酒の量や頻度はどうしても増える。“コロナアルコール依存症”にならないよう、自制するしかない。(室橋裕和)

☆むろはし・ひろかず 1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め、2014年に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。最新著書は「バンコクドリーム『Gダイアリー』編集部青春記」(イースト・プレス)。