2024年パリ五輪を託される指揮官は――。東京五輪サッカー男子3位決定戦(6日、埼スタ)で日本はメキシコに1―3で敗れ、1968年メキシコ五輪以来となる53年ぶりの銅メダル獲得はならなかった。最後の大一番でMF久保建英(20=レアル・マドリード)とMF堂安律(23=PSVアイントホーフェン)の二枚看板が不発。久保は試合後に号泣し、不本意な形で森保ジャパンの挑戦は幕を閉じたが、水面下でパリに向けた後任監督人事が着々と進められている。

 1次リーグで勝利したメキシコにきっちりリベンジされて完敗。0―3の後半33分にMF三笘薫(川崎)が1点を返すのがやっとだった。メダルを逃したイレブンはぼうぜんとする中、フィールドプレーヤー最年少ながら攻撃面を引っ張ってきた久保が珍しく感情を爆発させて号泣。それほど悔しい敗戦だった。

 森保一監督は「選手たちの頑張りを結果に結びつけてあげられなくて非常に残念。選手の努力は1ミリたりとも疑う余地はない。本当によくやってくれた。ただ勝てなかったということは成長しなければいけないということ。この悔しさを糧に成長してほしい」と涙交じりに語った。

 最後は世界との力の差を見せつけられての終戦。パリ五輪の金メダルは後任監督に託すことになる。そうした中、次の五輪代表監督候補に急浮上しているのが2002年日韓W杯戦士で前G大阪監督の宮本恒靖氏(44)だ。複数の関係者が「選手時代の豊富な国際経験に加えて、指導者としても今後の日本サッカー界を背負う人材として五輪監督に推す意見がある」と明かした。

 宮本氏は現役時代に日韓W杯に出場。大会前に鼻骨を折ったためフェースガードを着用してプレーし「バットマン」と呼ばれ、注目を集めた。06年ドイツW杯ではジーコジャパンで主将を務めた。当時から強力なリーダーシップが評価されており、日本サッカー協会も将来の代表監督候補として大きな期待を寄せてきた。実際、その下地もしっかりつくってきており、現役引退後には国際サッカー連盟(FIFA)が設置する大学院である「FIFAマスター」を修了し、国際的な視野を広げて指導者に転身した。

 古巣のG大阪でユース監督からキャリアをスタートさせると、18年シーズン途中にトップチーム監督に昇格。19年は7位、そして昨季はリーグ戦で2位、天皇杯でも準優勝とJリーグでも優れた手腕を発揮した。今季はチーム内で新型コロナウイルスのクラスターが発生した影響もあって低迷し、5月に解任されたが、協会内では実績や指導力が高く評価されている。

 コロナ禍で東京五輪が1年延期された影響もあり、大会終了後に次期監督をすみやかに決める必要があるが、宮本氏は現在フリーの立場で即座の就任も支障はない。毎回U―21代表が参加するU―23アジア選手権の予選が10月に行われるが、早ければそこでの指揮も可能だ。

 その一方で、ウズベキスタンで来年開催される同選手権の本大会は、これまでの1月からコロナ禍の影響で6月に後ろ倒しとなっており、今年10月の予選はひとまず代行監督を立てて、時間をかけ監督選考を議論するべきとの意見もある。甘いマスクで人気を誇った〝バットマン監督〟率いる宮本ジャパンが始動することになるのか。今後の動きが注目される。