【田辺晋太郎の肉アカデミー】Nice to MEAT you! 東京・渋谷道玄坂の、いわゆるラブホ街の一角に、数年前からうまい肉の店が集まっているんですよ。

 以前からあった「どうげん」、京都に本店がある「肉なべ千葉 渋谷店」、そして下町の名店から独立、高円寺のお店も人気の「焼肉ホルモン新井屋」です。今回はこの中から新井屋さんをご紹介します。

 こちらの店主の新井さんは実に研究熱心。例えば「特選厚切りタン塩」。使っているのは和牛ではなくオーストラリア牛のタンですが、これが素晴らしくおいしい! しっかり工夫しているから、下手な和牛タンよりよほどおいしいんです。2980円(訪問時の値段)という値段を見れば「え?」となるかもしれませんが、普通なら2人前の量です。その価値があり過ぎるんです。

 驚いたのが「特上和牛テール煮」。テールスープを作るためにある程度煮込み、だしガラになる前、まだしっかり味が残っている時点で取り出して、さらに手を加えたものです。ホロホロになったテールの肉が抜群にうまい!

「BIGハツステーキ 香草バター」には、見事に細かく包丁が入っています。店名でホルモンをうたっているだけあって、センマイ刺しなどホルモン類の鮮度も抜群。もちろんおいしい。

 こちらのお店、お肉、サイドメニューとも素晴らしいのに加え、さらに破壊力のある“裏メニュー”があります。コースの最後に出てきた、メニューに載っていない「カイノミバーガー」です。

 カイノミはバラ肉の中でヒレに近い部位。ヒレの柔らかさとしっとり感、そしてバラ肉の旨味を兼ね備えた、個人的に一番好きな部位です。これにタレをつけて焼き、マスタードソースとともにバンズに挟みます。このバンズは同級生に頼んで作ってもらっているというこだわりのものです。

 このカイノミバーガーをひと口食べて、あまりのうまさに手が止まりました。近年食べた中でナンバーワンのおいしさや! しっかり味わわなあかん! あんなに夢中になってバーガー食べたの、いつ以来だろう?

 なお、カイノミバーガーは通常メニューにはないため、コース予約時などにあるかどうかお店に確認してください。

 ワクワクするメニューが多数ある新井屋さん。6月15日には、すぐ近くに「焼肉ホルモン新井屋 はなれ」がオープンしました。どうげんさん、肉なべ千葉さんとともに、この一角を“肉通り”のイメージに塗り替えそうな存在です。

 ☆たなべ・しんたろう 1978年生まれ。東京都出身。2001年に「Changin’ My Life」でデビュー。03年に解散後は作曲家としてAKB48在籍時の渡辺麻友などに楽曲を提供。監修した「焼肉の教科書」シリーズは累計35万部を突破。最新著作「焼肉のすべて」が発売中。両親は歌手の田辺靖雄と九重佑三子。BS朝日「美女と焼肉」にレギュラー出演。