空手元世界王者を直撃 「形の選手は実戦でも強い?」

2020年01月09日 16時30分

空手形の第一人者、喜友名の技は破壊力抜群だという

 2020年東京五輪では琉球王朝時代の沖縄を発祥とする空手が初採用され、8月6~8日に組手と形が行われる。キックボクシングのように相手と対峙する組手はイメージしやすいが、仮想の敵を相手にした演武の完成度を競う形は難解に感じる読者も多いだろう。そこで本紙は女子形の元世界王者、宇佐美里香氏(33)を直撃。誰もが気になる、あの疑問を聞いてみた――。

 力強い技と気合の入った掛け声で会場の雰囲気を一変させる。空手の形は、五輪で金メダルが期待される種目の一つだ。

 形は8メートル四方の畳で、演武ごとに世界空手連盟が認定する102種類の中から選んだ形を披露する。立ち方や技の正確性などの基礎的な部分を見る技術点(70%)とパワーやスピードなどの力強さを見る競技点(30%)を7人の審判が0・2点刻みの5~10点で判定。上下2人ずつを除く、3人の審判による合計点が高い選手が勝利となる。

 ルールはフィギュアスケートやダンスの採点方法に近いようにも見えるが、宇佐美氏は「形は相手を想定し、攻撃したり受けたりする戦いの手順を一人で行います」と演武の中に攻防が隠されている点が違うという。さらに難易度ごとに点数が決められているわけではなく、形の一つひとつの技を完璧に出せているかどうかを見る点も異なる。「動きに力強さやスピードがあっても、脇を締める、軸をブラさないなどの基本動作ができていないと減点されます」。派手さよりも基礎が重視され「選手の鍛錬度や習熟度が自然と伝わってきます」と形の奥深さをアピールした。

 確実性の高い演武が求められるからこそ「下半身主導で動くことが大切です」。足を着地させ、体をひねってから、突きなどの上半身の技を出すことが形の基本動作で、他のスポーツとも共通点がある。野球の投手が足を上げてからボールを離すまでの瞬間の動きや、ゴルフの軸足回転のスイングなど、下半身から始動する運動動作は多い。そのため「実際に練習に形を取り入れている(他競技の)選手もいるそうです」。

 では失礼ながら、元世界女王に誰もが感じる最大の疑問をぶつけてみた。形の選手は「戦ったら本当に強いのか?」だ。

 宇佐美氏は「組手や他の武道と体の使い方が違う部分もありますが」と前置きした上で「当たったら、もちろん痛いです。技に力強さとスピードがないといけないので。特に男子形で圧倒的な強さを誇る喜友名諒選手(29=劉衛流龍鳳会)は、体の使い方を熟知しているので、一つひとつの技の破壊力がすごいです。まるでムチのような突きや蹴りは当たったら、本当に痛いと思います」とニヤリ。

 喜友名は昨年12月の全日本選手権で8連覇を達成し、世界選手権でも3連覇を果たしている日本の第一人者。トップクラスの選手が繰り出す技は“キック界の神童”那須川天心(21)級の威力があると言えそうだ。

 形は男子の喜友名だけでなく、女子の清水希容(26=ミキハウス)も金メダル候補。宇佐美氏は「理想は男女アベックV。海外勢が力をつけてきた中で、勝つことに価値があると思うので勝ってほしい」と期待を寄せる。ダブル金メダルで一気にメジャー種目となるか注目だ。

【喜友名&清水のアベックVに期待】宇佐美氏によれば、男子形の喜友名は「観客を自分の世界にのみ込む“オーラ”」がずばぬけているという。「最初の一撃で会場から拍手が湧き起こる選手は喜友名選手だけです」と絶賛。「喜友名選手の迫力あふれる形は、海外の選手を大きく上回っています」と世界でも力が抜けている。

 女子形の清水は「すごいと思うほどの“気迫”」が演武からあふれ出ており「初めて見たとき、その気迫に驚きました。本当に忘れられません」と舌を巻く。「スピーディーな中に気迫が表れている。気迫にあふれているときは、流れるようなスピード感で気持ちいいくらいの技が出ています」と迫力たっぷりの演武が武器だ。