ボクシングの元世界3階級制覇王者・八重樫東(37=大橋)が“節目の日”に引退を発表した。「本日(1日)をもって引退します。ボクシングが僕の人生を豊かにしてくれた。感謝してもしきれない」とコメントした一方で「(大橋秀行)会長に言われなければ(現役を)続けていました」と、未練を語る一幕もあった。

 大橋会長に引退を勧告されたのは、半年以上前の2月25日のこと。「激闘王」と呼ばれ、どんな不利な状況でも引かないスタイルは感動を与えると同時に、顔が原形をとどめないほどのダメージを負うことも多かった。引退勧告は、3人の子供の父親でセカンドライフに向けて飲食業も始めているだけに、万が一のことがあってはいけないという大橋会長の配慮からだった。

 2017年5月にIBF世界ライトフライ級王座を失った後、ノンタイトル戦で3連勝し、昨年12月にIBF世界フライ級王者モルティ・ムザラネ(南アフリカ)に挑むもTKO負け。世界王者に返り咲くには厳しい状況にあった。そんな中で引退勧告を受けた後に大橋会長からジムに入門した(04年)9月1日に引退会見を行う提案があり、八重樫は受け入れたという。

 今後はジムでトレーナーを務める。大橋会長が「(WBAスーパー&IBF世界バンタム級統一王者の)井上尚弥(27)ら若い選手がその背中を見て、教えてもらった大事なものがあると思います」と言うように、熱い選手を育てるはずだ。