WBA世界ミドル級タイトルマッチ(12日、エディオンアリーナ大阪)で王者のロブ・ブラント(28=米国)とのリターンマッチに臨む同級4位の村田諒太(33=帝拳)が“ヘビー級”を圧倒する調整を続けている。3日の公開練習では、視察に来たブラント陣営の目の前でその一端を見せつけた。これは過去にもKO勝利につなげた吉兆。どういうことか?


 この日のスパーリングの相手を務めたのはスーパーミドル級のアイザイア・スティーン(22=米国)。ミドル級の村田と階級リミットの差は約3・6キロだが、現在は減量の必要がない時期とあって約90キロあるという。

 一方、減量を徐々に始めている村田は現在76キロ前後。これがどれほどの差か。わかりやすいのは昨年大みそかに行われたフロイド・メイウェザー(42)と那須川天心(20)のエキシビションマッチだ。この時、前日計量で58キロだった那須川に対して公の場で体重計に乗らなかったメイウェザーは70キロを超えていたとも言われ、結果は1回TKO勝ち。村田とは体重が違うとはいえ、10キロ超の違いはこれだけ圧倒的な差がつくということだ。

 それが村田はこの日、米国から招聘中の3人で最も重いスティーンに鋭いパンチを打ち込んだ。普段のスパーリングでも圧倒することが多々あるという。似たようなケースは王者だった昨年4月の初防衛戦前にもあった。この時もスパーリングパートナーの一人が本来はミドル級ながらも、ヘビー級(90・7キロ超)に相当する体重で村田の相手を務めた。重い相手と長期間スパーリングに励むことで自然にスタミナは強化され、本番では相手のパンチが軽く感じ、恐怖心も薄れる。

 そうした効果もあって試合では右ストレートで倒してのTKO勝ち。“ヘビー級”相手のスパーリング効果はこの実績があるだけに「(大差判定負けの)前回は悔しい思いをしてるので、ブン殴って倒してやりたい」と話した村田が、有言実行の勝利で王座を奪回する可能性は十分ある。

 もっとも王座を奪われた昨年10月の対戦では、ブラントのスピードに翻弄されての完敗だっただけに「一発」に頼って同じ轍を踏むことは禁物。「今回はプレッシャーをかけて、上下をしっかり打ち分ける」(村田)。積極的に前に出て“ヘビー級”とのスパーでパワーアップしたパンチを打ち込みブラントのスタミナを削り、勝機を見いだす。

 この日の練習にはブラント陣営のネイサン・ピピトーン・アシスタントコーチが視察に来たが「お互いに一度やってるんだし、何も隠すことはない」(村田)との言葉に自信が垣間見える。あとは当日のリングで結果を出すだけだ。