俳優・サヘル・ローズ(36)が著書「言葉の花束 困難を乗り切るための“自分育て”」を先日、発売した。イランの孤児院で育ったサヘルは8歳の時、育ての母と来日。言葉の通じない日本で貧困、差別、いじめを経験し、中学生の時には自殺を覚悟したことも。そんな絶望の淵にいたサヘルを救ったのは母の愛。今、生きづらさを感じている人たちに送りたいというサヘルの思いとは――。
――来日してから、どんな苦労があった?
サヘル 居場所を見つけることができない不安。宗教も文化も考え方もまったく異なる国でしたので。誰とも言葉が通じないので「助けて」とも言えなかった。最もつらかったのは住む家がなかった時かもしれません。
――学校ではイジメが
サヘル 中学生の時にイランの人が不法滞在などバッドニュースが流れていたんです。同級生から冗談で「お前の親も犯罪者なのか」と。からかいからイジメが始まってエスカレートしていく。3年生で爆発してしまい、死にたいと。
――助けてくれる人は
サヘル 先生に「よしっ、頑張ろうか」と言われて…。頑張れという言葉を聞きたくてカウンセリング受けたわけじゃない。これ以上、頑張れないからSOSを出してるのに。全否定ではないけど『頑張ろう』が全ての人に当てはまる言葉じゃないということに、その立場になったことで気付くことができました。
――自殺を踏みとどまった理由は
サヘル 母に「死にたい」と伝えたら「いいよ」って。「でも、お母さんも一緒に行くね。サヘルがいなかったら生きてる意味がない」と。生きる意味とはお互いから得られるもの。母にとって私は生きがいだったんだ。その日からお母さんのために生きたいし、誰かの生きがいになれる人になりたいと思いました。
――自殺することが復讐と思っていたが、今は
サヘル 母の言葉で、殴られたから殴り返しては何の意味もない。あなたがもっと上に行って彼らの手の届かない位置に行きなさい。自分の姿を見て「なんでこんなことをしてしまったんだろう」と気付かせてあげるのが最も優しい復讐なのかな(笑い)。
――この本を通じて伝えたいことは
サヘル 自分が笑顔で生きている姿を提示することによって、生きづらさを抱えている子たちにメッセージを発信したい。成功した事例だけを見せるのは間違ってると思う。先日、大学入学共通テストで刺傷事件がありましたけど、もし「こういう選択もあるんだよ」って言える大人がいたら、その少年も違った考え方にたどり着けたかもしれない。葛藤している人たちに何かを投げかけられると信じてます。
――もし大切な人が「死にたい」と言ったら
サヘル 母の影響があるかもしれないですけど、いいよって。でももう1日だけ生きてみて、まだ出会ってないすてきな人が明日、待ってくれてるかもしれない。生きているからこそ私たち、出会えてるよねって。生きることには出会いが存在してる。それを信じてくれるなら一緒に歩かない?と伝えたい。もし生きたいと思うなら、私はあなたの味方であることを提示したい。
――最近はSNSの誹謗中傷が問題になっている。言葉が乱暴に扱われることについて
サヘル 名前をもらった時点で私たちは言葉の一部なんです。私はサヘルという言葉を生きている。私がいなくなっても言葉があるからこそ、私が見てきたものを伝えることができる。言葉って、命そのものだと思うんです。言葉を乱暴に使うということは命を乱暴に使っていることと一緒。自分の命だと思って言葉をかみしめてほしい。
――お母さんに伝えたいことは
サヘル 言葉にならない感情って存在する。ムリして言葉にせずに常にお母さんを見るということ。私の瞳にお母さんをちゃんと映すことが最大の愛なんじゃないかな。そして目の前に私が存在してあげることが一番の恩返しかな。
☆サヘル・ローズ 1985年10月21日生まれ。イラン出身。幼少期を孤児院で過ごし、7歳の時に育ての母に養女として引き取られる。8歳で母とともに来日。高校時代にラジオ局J―WAVEのオーディションに合格し、芸能活動を開始。現在は俳優として活動するほか、国際人権NGO「すべての子どもに家庭を」で親善大使を務めている。












