人気バンド「King Gnu」のギター兼ボーカルの常田大希(29)の「怒りの矛先を間違えるなよ?」発言が波紋を広げている。King Gnuは20~22日に新潟県湯沢町の苗場スキー場で2年ぶりに開催された国内最大級の野外フェス「FUJI ROCK FESTIVAL’21」(フジロック)に出演。常田の発言に対して賛否の声が上がる中、結局行きつく先はというと――。

 例年延べ10万人以上が訪れる国内最大級の野外フェス・フジロック。2年ぶりの開催となった今年は来場者数を半数以下に減らした上で、ステージ数も絞り、終演時間を繰り上げて開催された。

 開催については新型コロナのスプレッダーイベントになる危険性から賛否の声があった。トークイベントに出演予定だった女優の小泉今日子が開催前日に辞退を表明するなど出演者でも意見が分かれていたようだ。

 出演を終えたKing Gnuの常田は自身のインスタグラムで「色んな人生、職種があって多種多様な“誠実”がある中で、法律や行政命令が俺達民衆の最大公約数な訳で(健全な民主主義前提)、皆んなその中で必死にそれぞれの業界を守るため働いている。怒りの矛先を間違えるなよ?」と思いをつづった。その後にも「あらゆる意味で 全力は尽くした フジロック 二日間おつかれ そこに悔いは無し みんな最高だったぜ」とコメントしている。

 常田は23日にもツイッターに長文をアップ。フジロック出演を決めた経緯について「音楽業界はコロナ発生から長期に渡る自粛でたくさんの場所が潰れたり大勢のスタッフが仕事を失ってるこの一年半、長期に渡り行政の指導を徹底的に受け入れ向き合ってきました。そして今回行政からの要請の範囲内に規模縮小&感染対策をしてフジが開催する以上、そこに恩がある立場としての判断があったということです」と説明。 続けて「身内に医療従事者も勿論いますしどうしよもない葛藤は無い訳はないし、世話になってきた音楽関係者を見殺しに出来るわけもない」と葛藤があったことを明かした。一方で、会場内で素行不良を繰り返した一部集団に対しては「言語道断」と切り捨てた。

 音楽関係者は「開催については難しい判断だったと思う。フジロックは昨年中止しており、今年も中止したら、経済的に相当追い詰められたと聞く。イベント主催者だけではなく、周辺の飲食店や宿泊施設、観光スポットもフジロックによって潤っている側面もあるんですよ。その甚大な影響も考慮すると、開催に踏み切らざるを得なかったそうです」と話す。

 とはいえ、全国で新型コロナの感染者が急増しているのも事実だ。23日の新規感染者数は1万6840人。6日ぶりに2万人を下回ったものの、月曜日としては過去最多に上った。都内では医療崩壊も起こっている状態。フジロックの会場は緊急事態宣言等が出ていない新潟県とはいえ、県外からも多数が訪れる大イベントの開催に批判の声が噴出するのも無理はない。

 先月末にコロナに感染した都内在住の40代の男性もこう語る。

「私は、軽症のため自宅療養をしましたが、これで軽症なのかというぐらいつらかった。最初は発熱と倦怠感ぐらいでしたが、その後に体の痛み、下痢、じんましん、咳と次々に現れ、次はどんな症状が現れるのかと不安で…。常田さんの発言を一方的に否定できませんが、間違った受け取り方をする人がいなければいいなと」

 結局、行きつくのは、東京五輪・パラリンピック大会を開催している、その矛盾だ。IOC(国際オリンピック委員会)やIPC(国際パラリンピック委員会)、東京都、日本政府、大会組織委員会は、中止や延期を模索することなくオリパラを強行。24日にはパラリンピックが開幕する。バブル方式を徹底しているとはいえ、来日海外選手や関係者が8万人に上る国際的なイベントは容認され、普段のイベントは中止しなければならないことに、いまだ世間の納得は得られていない。そのため、このような問題が生じてしまう。

 前出の関係者は「フジロックは環境省や観光庁も後援しているイベント。政府は人流抑制を強く促しているはずなのに、これではメッセージをどう受け取っていいか分からない。結局、しわ寄せが来るのはアーティストであり、現場なんです」と話している。