元ジャニーズが現ジャニーズを制した。「第44回日本アカデミー賞」の授賞式が19日、都内で行われ、元SMAPの草なぎ剛(46)が映画「ミッドナイトスワン」で最優秀主演男優賞を受賞。しかも同作は最優秀作品賞も獲得する〝2冠〟の栄誉となった。そんな中、今回注目されていたのが、同じ主演男優賞に嵐・二宮和也(37)が選出されていたこと。ジャニーズは、自社を出て行った者に軍配が上がったことで、さぞかし地団駄を踏んでいるかと思いきや、実は同社にもメリットがあるようで…。

 優秀主演男優賞を受賞したのは草彅と二宮のほかに、小栗旬、佐藤浩市、菅田将暉の計5人。この中から協会員全員による最終投票で最優秀主演男優賞が決まった。呼ばれたのは草なぎの名前だった。会場は万雷の拍手で、二宮も笑顔でかつての事務所の先輩を称えた。

 壇上でブロンズを受け取った草なぎは「マジっすか…。ごめんなさい。なんか、頭真っ白になってしまって。今まで皆さんと仕事させてもらえたこと、仲間に応援してもらっていること、(香取)慎吾ちゃん、(稲垣)吾郎さん、近い人が支えてくれてこの舞台に立てたんだなと思って、うれしい」と目に涙を浮かべながら感謝した。

 同作で草なぎは、故郷の広島を離れ、東京・新宿のショーパブで働くトランスジェンダーの難役を好演。公開直後から大きな話題を呼び、同作を何度も鑑賞するリピーター客が続出した。SNS上では〝追いスワン〟という言葉まで生まれたほどだ。14日までの累計で興行収入7億円を突破した同作は、最優秀作品賞にも輝くという栄誉も得た。

 そんな喜びにあふれる草なぎのコメントの中で注目を集めたのが次の言葉だ。

「あきらめずに続けているといいことあるんだなと。人生捨てたもんじゃないなと」

 芸能関係者の解説。

「2016年末にSMAPが解散し、草なぎ、稲垣、香取の3人はチーフマネジャーとともにジャニーズを去りました。大手事務所を退所すれば、賞レースでも不利になる…。そんな不安が草なぎにあったのでしょう。ところが頂点に立ったことで、こんな発言が飛び出したのではないか」

 一方、穏やかでいられないのがジャニーズ事務所だ。

「嵐はジャニーズ上層部の寵愛を受けてきたグループです。ほとんどケンカ別れのような形で出ていった元SMAPの一人に軍配が上がれば、当然ピリピリすることが予想されました」(同関係者)

 ところが、だ。ジャニーズ側が悔しさを募らせていると思いきや、まったくそんな気配がないという。

「2019年7月に公正取引委員会から、退所した元SMAPを民放テレビに出演させないように圧力をかけた疑いがあるとしてジャニーズは注意を受けました。今回、まさにその元SMAPが最高賞に輝いたわけです。つまり公正な選出をアピールできるメリットがある。『ほら、うちは圧力をかけていないし、映画会社や協会員たちがうちに忖度することもないでしょ?』ってね」(芸能プロ関係者)

 伏線がある。公取委の注意があった4か月前の「第42回日本アカデミー賞」でのこと。その年の1月に嵐が活動休止を発表したタイミングということもあって、当時司会を務めた西田敏行が、二宮にそのことを質問したことがあったが、放送ではカットされてしまった。

 広告代理店関係者は「日テレのジャニーズ事務所に対する過剰な忖度だとして、話題になった」と振り返る。そんなことがあっただけに、同賞で余計な憶測を呼ぶようなことは避けたいというわけだ。

 もちろん、草なぎの演技が評価されたのは言うまでもないが、双方WIN―WINになれる最優秀主演男優賞だったのかもしれない。