ひょっとしたら、ひょっとするか――。ロッテが8日の西武戦(ZOZOマリン)に8―2で快勝。1試合を残してリーグ2位が確定し、4年ぶりのクライマックスシリーズ(CS)進出を決めた。シーズン終盤に入って貧打による得点力不足で急失速したが、この日は攻撃陣が本塁打や適時打以外に計9四球を奪って得点に結びつけるなど井口監督の目指す「粘りの野球」も復活。となれば、絶対王者・ソフトバンク相手でも勝てる可能性はある!?

 自らが目指した野球でCS進出をたぐり寄せたからだろうか。試合後の井口監督は珍しく興奮気味にこう語った。

「最後ずっと苦しい試合が続いていた中で、この崖っぷちというか最後の試合で、選手たちが最高のパフォーマンスを出してくれた。今年は粘って粘ってしっかりつないでいくのがマリーンズの野球だったので。その野球が取り戻せたと思います」

 勝てばCS進出という宿敵・西武との大一番。そんな究極の一戦で快勝した要因は2回に先制を許した直後から計7人の投手を小刻みにつぎ込んだ継投がある。だが、最も注目すべき点は、原点回帰した攻撃陣の復活だろう。

 今季のロッテは助っ人外国人を除けば、一発を期待できる打者はごくわずか。確実に高打率を残す巧打者も数少ない。そんな攻撃陣を生かしながら、どう相手以上に得点を奪うか。指揮官が注視したのは四球だった。

「四球を選ぶのはヒットで出塁することと同じ」とシーズン序盤から全選手に対して四球への意識付けを徹底した。この策が功を奏し、序盤戦はチーム打率が2割台前半でも四球や相手のミス、盗塁を絡めながら、必要最低限の得点を確保。試合終盤は自慢の強力救援陣による投手リレーで、僅差の勝利を積み上げた。

 その歯車が狂い始めたのは10月上旬だった。チーム内で新型コロナウイルスへの集団感染で主力選手が大量離脱すると、指揮官が標榜していた粘りの野球が機能不全に陥り、打線は再び得点力不足が深刻化した。同9日には首位ソフトバンクを0差まで追い詰めながら急失速。下位に低迷していた西武の猛追まで許した。

 だが、11月に入り指揮官がCS進出に向けて浮足立つ選手らに再び四球への意識付けを徹底。粘り強く四球を選ぶ攻撃スタイルを貫かせた。その結果が、この日の計9個の四球につながった。ロッテは試合前の段階でリーグ最多の481四球を記録。1試合平均は約4・08個だった。この日はその2倍以上を奪っただけに、指揮官が満足した表情を浮かべるのも無理はない。

 レアードとマーティンの2助っ人が故障で帰国中のため、今後のCSも「純国産打線」で臨む。一見すればひ弱に見えるが、四球や盗塁を絡めた野球を取り戻したとあれば、大仕事を成し遂げる予感はある。

 井口監督も「10月の苦しい戦いの中で、だいぶ(選手は)きつかったと思うが、そこを乗り越えた。そこを乗り切ったことは大きい」と自信を深めた。圧倒的不利と言われるCSだが、自らの野球を取り戻したロッテ。10年ぶり2度目の下剋上も夢ではない。