涙の復活劇だ。大相撲秋場所千秋楽(27日、東京・両国国技館)、横綱大の里(26=二所ノ関)が大関安青錦(22=安治川)を一方的に突き出して快勝。相星決戦を制し、12勝3敗で6場所ぶり6度目の優勝を果たした。元大関琴奨菊の秀ノ山親方(42=本紙評論家)は1年ぶりに賜杯を抱いた横綱を高く評価する一方で、まだ復調の途上であることを強調。完全復活への課題を指摘した。

 大の里が1年ぶりに賜杯を奪回した。昨年は春、夏場所で連覇を達成し、横綱昇進。秋場所も制して〝1強時代〟を築いた。しかし、九州場所で左肩を負傷してから暗転。今年は2場所連続休場も経験した。表彰式の国歌斉唱ではこらえきれず、目頭を抑えて号泣。「ケガをして思い通りの相撲が取れない1年が続いた。こうやって賜杯をいただけたのが本当にうれしい」とかみしめた。

祝勝会で鯛を持ち上げる大の里。右は二所ノ関親方
祝勝会で鯛を持ち上げる大の里。右は二所ノ関親方

 相星決戦は横綱の完勝だった。もろ手突きで安青錦をのけぞらせると、続けざまに喉元へ追撃。相手に何もさせず一方的に突き出した。秀ノ山親方は「右差しの形にこだわらず、突き放して相手の上体を起こすことに徹していた。緊張や重圧を受け入れて、腹をくくって臨んでいたのでは。大の里の勝負に対する執念が出た一番だった」と高く評価した。

 一方で、15日間全体では相撲内容が安定せず、まだ完全復活には至っていない印象を残した。序盤から中盤にかけては、後ろに下がりながら白星を拾う場面が目立った。終盤に入ってようやく本来の力強さを取り戻したかに見えたが、13日目から連敗して失速。後続に2差をつける独走状態から一転、相星決戦に持ち込まれた。

 秀ノ山親方は「前半は相手に押し込まれて後手に回り、とっさに引く悪い癖が出た。体が大きい割に器用なところもあるので、引きやはたきに頼ってしまいがちなところがある。後半は自分から攻める姿勢を見せたけれど、優勝を意識したのか、勝ち急いで連敗につながった。なかなか心技体のバランスがかみ合わなかった」と指摘する。

 その上で「圧力が強い相手や苦手意識がある相手と当たった時には間合いがつかめず、立ち合いに迷いが生まれて後手を踏む。巡業や場所前に稽古を重ねて、立ち合いの感覚を磨くこと。千秋楽のように迷いなく踏み込んで相手に圧力をかけられれば、本来のスケールの大きな相撲を取り戻せる。そうなれば、以前のような安定感が出てくるはず」と力説した。

 大の里は来場所以降へ向けて「13勝、14勝とかハイレベルな優勝を目指して頑張りたい」。真の復活を遂げるのは、これからだ。