過日、久しぶりに軽い風邪を引いた。風邪薬を飲んだ後、その昔、「風邪には卵酒が効く」と聞いたことがあるのを思い出した。レシピも見ずに作ってみたところ、熱した酒の刺激が詰まった鼻を突き、さらには白身のドロッとした部分が残っていて、お世辞にも「おいしい」とは言えなかった。これなら普通に熱燗を飲んで寝たほうが、よっぽどマシだ。
そもそも卵酒で風邪の「治療」はできない。温まることで副交感神経が優位になって眠りやすくなる、たんぱく質豊富な卵で栄養を補うなどはできるのかもしれない。しかし、アルコールの作用によって、逆効果になってしまうことも少なくない。
第一にアルコールは粘膜のバリア機能を弱らせる。さらに自律神経が乱れることで鼻や喉のIgA(粘膜の免疫抗体)が低下し、ウイルスが侵入しやすくなる。加えてアルコールの利尿作用によってトイレが近くなり、眠りも浅くなるのでカラダが休まらず、結果的に治りが遅くなりかねないのだ。78℃以上に熱し、きちんとアルコールを飛ばせば、こうした影響は受けにくくなる。だが酒飲みとしては、「もったいない」という思いが先立ってしまい、55℃の飛び切り燗程度で火を止めてしまう。
そんな話を飲み仲間のドクターに伝えると、「さすがに風邪の時は酒を控えなさい」と呆れ気味に言う。ネットを見ると「酒を飲んで風邪が治った」「酒でアルコール消毒」などというコメントも散見するが、「とんでもない」とドクター。特に風邪薬を飲んでいる時は、眠気などの副作用が強く出る可能性があるので厳禁なのだそう。
結局のところ、風邪を引いた時の特効薬は、睡眠・水分・保温の3つが王道。卵酒のような昔ながらの知恵には温かみはあるけれど、風邪が治るという明確なエビデンスはない。風邪の日は強制的な休肝日と割り切って飲むのを止め、回復してから飲むようにしよう。












