【渡辺ありさの界隈ウォッチ】フリーライターの渡辺ありさが様々な界隈をウオッチする当連載。今回は「女装男子界隈」をお届けします。“ジェンダーフリー”の考えが根付きつつある現代。ちまたでは、性別にとらわれず自由なファッションを楽しむ人が増えているようです。平日はⅠTエンジニアとして働き、休日は美しい女装を追求する男性インフルエンサーのNanasaiさんもその一人。そこで女装の魅力やその界隈の事情について話を聞きました。

女装のおかげで価値観をアップデートできたというNanasaiさん
女装のおかげで価値観をアップデートできたというNanasaiさん

 ――女装を始めたきっかけ

 Nanasai 幼い頃から、アニメやゲームに出てくる髪の長い中性的な雰囲気の男性がカッコいいと思っていました。でも父が厳格な人で、自由な髪形やファッションが許されず。自立したら好きにしようと思っていたのですが、社会人になったら今度は会社側の規則で長髪が禁止されていて…。そこでウィッグを購入し、休日だけ長い髪に挑戦してみることにしたんです。それからメークの勉強も始めて、かわいい服を集めるようになり、今に至ります。

 ――女装姿を発信した理由

 Nanasai 友人とつながる目的で使っていたXのアカウントがあり、そこに突然自分の女装写真を張ったら面白いかなと思って(笑い)。文化祭の学生のような内輪ノリですね。でもある日、女装の投稿が思いがけずバズってしまい…。まさか自分の女装が「キレイ」と話題になる日が来るとは思いませんでした。

 ――女装の魅力とは

 Nanasai 絵を描くことに似ていると思います。最初は下手でも、練習を重ねるうちに技術がアップしていく。メークやファッションはもちろん、立ち姿や振る舞い、最終的には女装写真を撮る際のライティングや画角なども学ぶことになるので、新たな気付きをたくさん得られました。男性は、生活の中で美を意識する機会が本当に少ないのだということも思い知らされましたね。

 ――女性の気持ちも分かるように?

 Nanasai 女装をしたら女性の気持ちが分かるようになるという説には懐疑的です。僕は、女性が毎日のルーティンの中でやっている大変なことを、都合よく切り取って楽しんでいるだけなので。僕が感受性に乏しいだけかもしれませんが、安易な共感は失礼にあたるかなと思います。

 ――謙虚で優しいからモテそう

 Nanasai いえ、非モテです(笑い)。もともとの性格が内向的なのと、休日は女装をするか電子機器イジリをして過ごしているので、女性と趣味を共有するのが難しくて。

 ――でも女性ファンも多いのでは

 Nanasai 女性から支持されることもゼロとは言いませんが、女装界隈は男性からチヤホヤしてもらうことのほうが多いと思います。女装界隈にはグラデーションがあり、僕のように性自認が男性の異性愛者で、ファッションの延長として女装をしている人のほうがまれかもしれません。個人的に危惧しているのは、10代で女装写真を公開している子供。若ければ若いほどいいねがたくさんつく傾向があり、肌を見せればさらに人気が出ることも。守られるべき子供たちが、悪い大人から搾取されないよう対策が必要だと思います。

 ――女装は大人になってから

 Nanasai とはいえ、自分で楽しむ分には何歳から始めてもいいと思います。若い人は肌がキレイなので化粧のりもいいですし。逆に、僕は30歳を過ぎてやっと親が敷いたレールから外れ、女装を始めることができた。女装に限らず、好きなことを始めるのに年齢は関係ありません。

 ――始め方が難しそう

 Nanasai 完全予約制の「女装サロン」という場所があります。そこではノウハウを持ったヘアメークさんやカメラマンさんがいて、プロの力でイチからキレイな女装をつくり上げてくれます。50~60代の方もよくいらっしゃるそうで、僕らよりもさらに抑圧的な時代を生きてきた方々だから、鏡を見てうれし涙を流す人もいると聞きます。

 ――新しい一歩を踏み出したいすべての人にメッセージを

 Nanasai 僕は女装を始めたおかげで、30代にして大きく価値観をアップデートできました。何歳でも遅過ぎることはありません。今の自分が一番若いのですから、臆することなく好きなことを楽しんでもらいたいです。

女装の魅力を語ってくれたNanasaiさん
女装の魅力を語ってくれたNanasaiさん

☆ななさい 1990年5月13日生まれ。身長185センチ。本業はITエンジニア。SNSで自身の女装姿をはじめとした写真を発信中。「X」は【@Nanasai7】。