オカルト評論家・山口敏太郎氏が都市伝説の妖怪、学校の怪談、心霊スポットに現れる妖怪化した幽霊など、現代人が目撃した怪異を記し、妖怪絵師・増田よしはる氏の挿絵とともに現代の“百鬼夜行絵巻”を作り上げている。第205回は「むっしょい」だ。

 大正時代の話である。とある集落で豊作を約束してくれる神に捧げられる人物が「むっしょい」である。その印として、背中のコブが挙げられる。このコブには虫が入っていると言われており、山に行く日が近づいた場合、コブが動くという。第三者が実際に触ってみたところ、コブが動いたという。

 むっしょいとは、虫を背負うという意味である。呼称としては「むっちゃん」「むっしょいさん」「むっしょいさま」とも呼ばれている。

 見た目は、非常に美形であり、女性とも間違えられることがあった。勉強もスポーツも全てにおいて優秀であった。

 なお、山に入る時は、むっしょいに精通が来てからと言われている。ちなみに、山の神のもとに行く時は、突然姿がかき消されるとされている。

 むっしょいに選ばれた子供は、戸籍に入れることもないし、学校に入ることもない。つまり、存在しない子供として、集落の中で特別扱いされるのだ。

 かつて、自分の子供を神に捧げるのが嫌になった両親が、むっしょいに選ばれた自分の息子の睾丸を切除した。そうすることにより、精通が来ないと判断したのだ。

 しかし、肝心の息子は死亡してしまい、両親も病気になって亡くなってしまった。それどころか、集落周辺の広い範囲において、不作や水不足が発生し、大変な問題になったという。