オカルト評論家・山口敏太郎氏が都市伝説の妖怪、学校の怪談、心霊スポットに現れる妖怪化した幽霊など、現代人が目撃した怪異を記し、妖怪絵師・増田よしはる氏の挿絵とともに現代の“百鬼夜行絵巻”を作り上げている。第200回は「いまじょさん」だ。

 奄美大島の怨霊伝説である。主に奄美大島南部の瀬戸内町嘉鉄で、戦争が終わった頃まではよく語られていたという。

 呼称は漢字表記で「今女」と記される。お尻まで伸びた長い髪をしており、斜め掛けにした白い風呂敷を腰のあたりで束ねている。

「いまじょさん」は、口にすることも忌み嫌われた。別名「いまじょうさん」とも呼ばれる。ほとんど封印話に近いものである。

 伝説によると、いまじょさんは、やんちゅ(家人)という奴隷のような身分であった。しかし、美人であったため、主人はひそかに愛人にしてしまった。やがて、いまじょさんは妊娠してしまった。

 これを知り怒り、狂った正妻は、いまじょさんを若者たちに輪姦させたり、陰部に火箸を差し込んだりして惨殺してしまった。いまじょさんの家族は、遺体を引き取り、呪いをかけた。

 すると、主人の家の者が続々と不審死を遂げた。自分の持ち船が沈んでしまう者、事故死する者、ハブにかまれる者…。主人の家筋は明治の頃には全て絶えてしまったという。

 主人の家が滅亡した後は、往来に出て通行人を襲ったといわれている。通常は普通の旅人と変わらない姿をしているが、襲う時は黒い牛に化けたり、犬に化けたりする。

 追いかけられた場合、すぐには自分の家に入らず、街中をぐるりと回って「私はイナビキだ」と宣言して入ると良いとされた。

 また、伝説をもとにした「忌怪島」なる映画が近年製作され、ヒットした。