オカルト評論家・山口敏太郎氏が都市伝説の妖怪、学校の怪談、心霊スポットに現れる妖怪化した幽霊など、現代人が目撃した怪異を記し、妖怪絵師・増田よしはる氏の挿絵とともに現代の“百鬼夜行絵巻”を作り上げている。第197回は「盆の船」だ。

 ある漁村に伝わる妖怪である。その集落ではお盆になると「盆の船」が複数の死者を乗せて帰ってくるという。お盆の間、盆の船は船頭を乗せたまま沖合で待機している。ちなみに船頭はボロボロの笠をかぶっている。

 中には、黄泉の国に帰りたくないので、生きている人間の足を引っ張って水死させ、自分の代わりに盆の船の帰り便に乗せる死者もいるという。船頭はそれが乗せてきた死者と違うとしても、自分も早く黄泉の国に帰りたいので黙認して乗せてしまう。

 そもそもお盆というのは、漁師にとって仕事をやってはいけない期間である。海で死んだ人々が帰ってくる時期なので、それに合わせて殺生をしてはいけないと恐れられているのだ。

 海以外でも殺生を禁じる習慣は残されている。例えば、ある山は12月の一定の日付において、立ち入りを禁じている。山に入ることで、山の神の怒りを買ってしまうといわれる。若い女性の場合、そのまま身柄をさらわれてしまうとされた。