〝冬虫夏草〟をご存じだろうか。もともと希少で高価な漢方薬素材だったが、近年は気候変動でさらに希少性が高くなっている。注目される理由と、効果的な摂取法、選び方などを専門家に聞いた。

【昆虫に育つキノコ――抗ウイルス作用や抗菌作用】

 冬虫夏草はキノコの一種だ。中国原産の漢方薬や薬膳料理の高級素材であり、高額な場合は1キログラム1000万円などという価格で取引されることもある。アミノ酸などの栄養素を豊富に含んでサプリメントの成分としても人気を集めている。

パウダー状になった冬虫夏草
パウダー状になった冬虫夏草

 冬虫夏草を簡単に説明すれば、蛾、ハチ、アリなど昆虫を栄養源として育つキノコと考えると分かりやすい。ただし、中国原産のもともとの冬虫夏草は虫とキノコの組み合わさった複合体だ。麦角菌科の虫草属冬虫夏草菌がコウモリガ科の幼虫に寄生してできたものを言う。

「冬の間は虫として土の中にいたものが、夏になると草菌のキノコとして地上に現れることから冬虫夏草と名付けられたと言います。不老長寿の秘薬と古くから珍重されてきました」と説明するのは薬膳研究家で国際中医薬膳師・国際中医師のユウ・シャーミンさんだ。学名を「Ophiocordyceps sinensis」、別名で「中華虫草」という。

 このキノコの複合体に含まれる化合物には、真菌類の細胞膜を構成するステロールであるエルゴステロールなどがあるが、特徴的な成分としてコルディセプス酸(虫草酸)を7%含んでいる。このコルディセプス酸はキナ酸の異性体であり、抗ウイルス作用や抗がん作用のあるコルジセピン(cordycepin)と呼ばれる抗菌成分を含むことが報告されている。コルジセピンは近年、がん患者の化学療法の後の生活の質(QOL)向上と細胞性免疫の向上に対する有効性が認められるようになっている。

【漢方では肺と腎に効く、古くからの長寿の秘薬】

「中国では冬虫夏草は肺と腎を養うことから不老長寿、滋養強壮によいとして珍重され、漢方薬原料として、また薬膳料理の素材として老化防止や免疫力アップなどの効果があるとされています」(ユウさん)

 古くから長寿の秘薬と言われる冬虫夏草は、特に肺と腎によいとされているという。

 中医学では肺は、体を守る「気」である「衛気」をつかさどる五臓のひとつである。鼻や口から外気とつながる体の防波堤とも言われ、肺の養生は体の防衛力アップにつながるとされる。その肺について「益肺」の効能があるとされるのが冬虫夏草であり、肺に活力を与えて、防衛力を高めてくれる。

 また五臓のひとつの腎は体内の根源的なエネルギー(精気)を蓄えており、体の成長、発育、生殖、老化をつかさどっていて、腎が衰え始めると疲れやすかったり、だるかったり足腰を弱くして老化の始まりとされる。冬虫夏草は「補腎」の効能があるとされ、腎に活力を与え、精力も高めてくれる。

 冬虫夏草は特に中高年に人気だ。人生100年時代と言われる中、冬虫夏草の「薬食同源」の免疫力アップ、滋養強壮の効果を期待してのものだろう。

 今後、秋から冬にかけての季節は、風邪やインフルエンザなどの感染症が流行しやすい。特に気管支喘息に悩んでいたり、空咳が長引きやすい人など、肺と腎に弱点を抱える人たちを助けてくれる生薬と言える。そこで次回は、冬虫夏草をどのように使うといいのか、またその選び方などを聞く。