「服の鉛筆」という新商品が今年4月に発売されて話題を呼んでいる。名称の通り、服から作られた鉛筆である。開発者に狙いを聞いた。
【裁断クズに新たな価値を与える】
「服の鉛筆」の芯は、洋服を作る際にできてしまう裁断クズを炭化技術によって鉛筆の芯にしたものだ。できた「服の鉛筆」の芯には約20%の繊維炭が含まれる。この繊維炭が入ることで鉛筆芯の黒度が高くテカリがないマット調に仕上がるため、鉛筆アーティストなどから高い評価を受けているそうだ。
この「服の鉛筆」を作ったのは文具メーカーではなく、アパレル縫製メーカーのミヤモリ(富山県小矢部市)である。開発を推進した宮森穗同社社長によれば、「洋服を作る際には生地の20%ほどが裁断クズになってしまいます。繊維業界はどの会社でも裁断クズを出していますが、こうした裁断クズは、従来は焼却して埋め立て処理されていました」とのこと。
同社はスポーツウエアなどのニット縫製工場であり、特に学校の体操服をはじめスポーツ専用ウエアや一般的なカジュアルウエアを縫製している。その生産量は年間およそ60万着。そのため年間の裁断クズ総量は20トンにもなる。20トンの裁断クズを運搬して焼却すると、4万キロ以上もの二酸化炭素が排出される計算になる。どうすれば裁断クズ処理での二酸化炭素排出を減らせるかは、繊維ビジネス各社に共通する課題でもある。
「この二酸化炭素排出を何とか削減できれば、地球環境のため、何より私どもが体操服を送り届けている子供たちのためになります」(宮森社長)
社内で対策アイデアを募集し、出てきたアイデアが廃棄物である裁断クズから「服の鉛筆」という製品を生み出すというものだったという。
【どんな繊維素材でも炭化可能に】
裁断クズから鉛筆を作るには、まず裁断クズを処理した裁断片を炭化し、繊維炭にしてその繊維炭の粉体から繊維炭が入った芯を作り、鉛筆が完成する。しかし同社は縫製工場であり、炭化技術や鉛筆製造技術についてはプロに協力を求めた。炭化に関して協力してくれたのは炭化装置メーカーのZEエナジー(東京都中央区)である。
さまざまな種類の繊維が混在している裁断クズを炭として残す方法を開発するまでに、およそ2年半を要した。鉛筆自体の製造についても鉛筆メーカーに共同開発の形で協力してもらい、「服の鉛筆」を作る技術は特許出願済みだ。
出来上がった「服の鉛筆」は2023年の日本文具大賞サステナブル部門で優秀賞を受賞し、本年4月から同社より発売された。価格は6本セットで1500円(税込)。鉛筆の濃さは小学生が使用する鉛筆で主流の2Bである。
同社の狙いである二酸化炭素削減効果は年間9000キロ以上と試算されている。これは1本の木が年間に吸収する二酸化炭素が14キロとされるため、木の600本分以上の削減効果に匹敵することになる。環境に対するそのような効果は、広い意味で我々の健康にも寄与するはずだ。環境貢献や健康を意識する人は、ぜひ「服の鉛筆」を使ってみてはいかがだろうか。











