“克服できるがん”が増えてきた。そんな中、まだまだ治すことが難しく、余命も短いと言われるのが「すい臓がん」だ。なぜ治すのが難しいのか。消化器外科医の横尾貴史先生に教えてもらおう。

 ――すい臓がんが難治がんと言われるのはどうしてでしょう

 横尾医師(以下、横尾)1つ目の理由としては、リスク因子は分かっていますが、大きな原因が分かっておらず対処法がないことです。代表的ながんの中で、すい臓がんや大腸がんは主な原因が特定されていません。逆に、例えば胃がんならピロリ菌の除菌、肝臓がんだと主な原因となるウイルス対策をすると予防につながると言われています。

 ――でも、大腸がんは比較的生存率が高いイメージがあります

 横尾 それは2つ目の理由に関係します。大腸がんは検診プログラムが確立されているため、早期発見早期治療を目指すことができる。しかし、すい臓がんは「この検診を定期的にやれば早期発見ができ、確実に検診のメリットが享受できる」という検診メニューがない。

 ――そうなると、早期発見がなかなか難しそうです…

 横尾 さらにいうと、転移がしやすい。進行スピードが速く、数か月で転移をします。すい臓の後ろには大動脈という太くて重要な血管や、重要な神経が通っています。すい臓にできたがん細胞は浸潤という形ですぐに血管や神経に入り込んでいきます。仮に1年に1回の精密検査をしたとしても早期で発見できない可能性が十分にある。また、再発しやすいという特徴もあります。

 ――治療法の選択肢としてはどういうものがありますか

 横尾 手術や抗がん剤、放射線治療など、他のがんと同じです。根治を目指すのであれば手術です。しかし、手術ができるレベルの小さい状態で見つけることはそもそも難しく、手術ができたとしても、再発しやすいなど、必ずしも予後がいいとは限りません。大腸がんだとステージⅠの5年生存率は90%ですが、すい臓がんだとステージⅠでも50%です。早期で見つけても五分五分の戦いになります。

 ――手術がとても大変だと聞いたこともあります

 横尾 すい臓がんの中でもすい臓の頭部にできたがんを切除する「膵頭十二指腸切除術」は消化器外科領域で最難度と言われ時間もかかります。数ミリの胆管や膵管をつなぎ合わせるという大がかりな手術になり、患者さんの年齢や体力によっては思わぬ合併症を招くこともある大変で、難しい手術なんです。

 ☆よこお・たかし 消化器外科医。外科学会専門医・消化器外科学会指導医・消化器内視鏡学会専門医。神戸大学医学部卒業後、がん研究会有明病院などを経て、社会医療法人健生会土庫病院消化器・肛門病センターの副センター長として勤務している。