両親の自殺を手助けしたとして、自殺ほう助罪で起訴された歌舞伎俳優・市川猿之助被告(47)の初公判が20日、東京地裁で行われ、起訴内容を認めた。検察は懲役3年を求刑。判決は11月17日に言い渡される。注目は公判で、猿之助被告の歌舞伎界復帰願望が明かされたことだ。松竹も後押しする意向というが、前途は多難だ。事件のきっかけとなったセクハラ&パワハラ報道の真相はあいまいのまま。復帰直後に第2、第3弾の爆弾投下が危惧されている。

猿之助被告を乗せた車
猿之助被告を乗せた車

 猿之助被告は短く髪を整えてマスクをし、紺のネクタイとスーツ姿で出廷。起訴内容について「間違いありません」と認めた。

 5月に都内の自宅で、父・市川段四郎さんと母・延子さんに睡眠導入剤をすりつぶして水に溶かし服用させ、自殺を手助けしたとして自殺ほう助の罪に問われている。

 被告人質問では、弁護士から両親への自殺ほう助に至った理由が2つあり、当初報じられていた週刊誌のセクハラやパワハラ報道以外に、事件前から自殺願望を抱いていたことが明かされた。

 仕事にまい進することで自殺願望にフタをしてきたが、週刊誌報道をきっかけに「地獄の釜がバカンと開いてしまった」と形容。両親にその決意を伝えると、延子さんは「あなた1人でいかせるわけにはいかない。私たちも一緒にいく」。段四郎さんからも「僕だけ生き残るのはいやだ」と言われ、両親から後始末を含めて「僕にすべて任せると言われました」と語った。

 どうすれば事件を起こさずに済んだかと思うかと聞かれると、「自分がもっと強ければ、こういうことは起こらなかった。突き詰めれば、生まれてこなければよかった」とまで口にした。

 それでも猿之助被告からは〝前向き〟な思いが次々と明かされた。読み上げられた供述調書では、事件直後は「自殺したい」と思っていたというが、「周囲の人の話を聞いて、できることをやっていかないといけないと思うようになった。許されるのであれば、舞台に立ちたい。歌舞伎で償っていきたい」と変化した。猿之助被告も最後に「反省、申し訳なさと感謝を一生背負っていく思いです。もし僕ができることがあるなら、それをさせていただき、生きる希望にしたい」と復帰願望を隠さなかった。

 検察側は懲役3年を求刑。弁護側は「強い悔悟と生きる意思を表明し、すでに社会的制裁を受けている」と執行猶予付き判決を求めて結審した。

 弁護側が提出した上申書の中で、歌舞伎興行を手掛ける松竹の迫本淳一会長が「被告人に寄り添い、共に明日に向かって進んでいけるようにする」と支援していく方針を表明。執行猶予付き判決なら、猿之助被告は早期復帰する可能性もある。

 とはいえ、復帰しても〝いばらの道〟が続くことになりそうだ。

 公判では、週刊誌が報じた澤瀉屋一門の弟子筋や共演した俳優、劇団スタッフらへのパワハラやセクハラ疑惑について、事実関係を含めて何も明らかにされることはなかった。

「事件を起こした動機の重大部分について一切明らかになることもなく、猿之助被告も反省などを含めて言及しなかった。こうした姿勢に、歌舞伎界にはびこるハラスメントの土壌改善を訴えてきた人物らが不満を持っている。その中には週刊誌にリークした者もおり、猿之助被告が復帰した際には〝第2、第3の告発〟が出てくることは間違いないと言われている」(梨園関係者)

 セクハラやパワハラ疑惑に関する興行側などの調査は進んでおらず、真相はうやむやのまま。こうした事態にじくじたる思いを抱いている関係者もいるのだ。

 猿之助被告が復帰した際に新たな疑惑が報じられるようなことがあれば、それこそ本格復帰の道が閉ざされかねない。