アイドルグループ「SKE48」のチームEが7月15日から初のオリジナル公演「声出していこーぜ!!!」をスタートする。チームSの「愛を君に愛を僕に」公演(2022年5月開始)、チームKⅡの「時間がない」公演(22年12月開始)に続き、これで3チーム全てのオリジナル新公演が出そろう。巨額のコストがかかる新公演の立ち上げにSKE48はなぜ積極的なのか?その理由を追った。

「公演のタイトルにふさわしい盛り上がる曲ばかりです」「今度の公演も楽しみにしていてください」。約1か月半後に迫った初日を前にSKE48の運営会社である株式会社ゼストからはポジティブな声が聞こえてくる。小室哲哉プロデュースのチームS公演、韓国人DJ・Night Tempoらが楽曲提供したチームKⅡ公演に続いて、チームE新公演の成功にも相当の自信を持っている様子だ。

 チームE公演には、ももいろクローバーZの「行くぜっ! 怪盗少女」や「ココ☆ナツ」、でんぱ組.incの「W.W.D」などの作詞作曲で知られるヒャダインが4曲を提供。「ヒャダインさんはファン目線で考えてくださる方。『声出して行こーぜ!!!』というタイトルの公演なので(声出し可能になった)今の状況をきちんと理解してくださった上で曲を提供してくれています。アッパーでキャッチーな楽曲はチームEにすごくマッチしています」(SKE関係者)という。

 新公演立ち上げには楽曲や衣装(チームS新公演では80着以上、チームKⅡ公演は100着以上の衣装を新たに制作)、振り付け、照明、レコーディング、ミュージックビデオ制作など数千万円もの費用が必要といわれており、昨年スタートした2つの新公演では合わせて約1億円(推定)もの制作コストがかかったと見られる。それでもゼストの親会社である株式会社KeyHolderが2月に明らかにした昨年度決算ではSKE48事業は好調に推移。これも新公演への投資が大きなリターンを産み出すという好循環サイクルにつながっているからだ。

 チームKⅡ公演初日の観覧応募倍率は19年3月にSKE48がゼストに移籍してから最高となる約30倍を記録。「新公演を始める1番大きな理由は劇場にお客さんに来ていただくこと。反響は大きく(観覧応募数は)大幅に増えています」(ゼスト関係者)と確かな手応えを感じている。さらに大きいのが新公演効果で劇場公演のネット配信の月額会員数が右肩上がりとなっていることだ。CDやグッズの売り上げ、イベント出演などアイドルグループを運営する中で収益の柱はいくつかあるが、昨年度のSKE48はデジタル部門が収益を大きくけん引。劇場公演の配信やメンバーのモバイルメールサービスなどのデジタルコンテンツが好調だったことがSKE48事業の黒字化に大きく貢献したという。

 新公演は収益面だけでなくグループに対するファンの熱量を上げることにもつながっている。SKE48は15周年(10月5日)直前の9月29、30、10月1日に5年ぶりに楽曲の総選挙「リクエストアワー(リクアワ)」を開催。「3チームの新公演の楽曲がすべて投票対象となりそうなのでめちゃくちゃ楽しみです。僕は『夢の階段を上れ!』かチームEの新公演で倉島杏実ちゃんが参加するユニット曲に投票する予定です」(高須クリニック名古屋院・高須幹弥院長)と早くもファンの間では盛り上がりを見せている。オリジナル公演をバネにグループの勢いを加速させる狙いもあり、昨年の早い段階で全チーム新公演開始→リクアワ開催の流れは決まっていたという。

 SKE48の運営責任者であるゼストの藤田猛第1マネジメント部長は「チームで劇場公演を行うことによっていろんなメンバーに光が当たることにつながると思うんです。だからこそチームと劇場公演は大切にしていきたい。グループにとって1番コアなところにあるのが劇場公演なんです」と語る。

 坂道の台頭もあってここ数年、48グループのメディア露出は減少している。昨年、須田亜香里が卒業したことで全国的な知名度のあるメンバー不在という課題も抱えるSKE48。オリジナル新公演がアイドル戦国時代を生き抜くための〝切り札〟となるか――。