「悪童」が大変身だ。大相撲九州場所千秋楽(27日、福岡国際センター)、幕内阿炎(28=錣山)が幕内高安(32=田子ノ浦)、大関貴景勝(26=常盤山)との決定戦を制し、12勝3敗で初優勝を果たした。一昨年にコロナ対策の規則違反となるキャバクラ通いが発覚。出場停止処分で幕下まで転落した。数々の問題行動で物議を醸した男が、どん底を経験したことで改心。入門時から知る〝武道の達人〟も心の成長に太鼓判を押した。
阿炎は本割で単独トップの高安を突き倒し、貴景勝を含めた三つどもえの決定戦に進出。高安をはたき込み、貴景勝を押し出して初優勝を決めた。表彰式のインタビューでは「うれしいです。まだ何か、ウソのような感じで高ぶっています」と感慨もひとしお。師匠の錣山親方(元関脇寺尾)への思いを問われ「迷惑しかかけてこなかったので、少しでも喜んでくれたら」と涙した。
三役の実力がありながら、かつては土俵外で数々の不祥事を起こして物議を醸した。2019年九州場所前はSNSに不適切な動画を投稿。日本相撲協会に反省文を提出し、協会員はSNS使用が原則禁止となった。翌年2月には自身が発端となって開かれたSNS研修会で「寝てたし、何も聞いてねーし」と発言し、厳重注意を受けた。
さらに同年7月場所でコロナ対策の規則違反となるキャバクラ通いが発覚。3場所出場停止などの懲戒処分が下され、幕下まで転落した。どん底を経験したことで、阿炎の言動は一変。自宅に夫人と娘を残し、部屋に住み込んで真摯に相撲と向き合った。錣山部屋と親交があり、阿炎を入門時から知る居合の江戸無外流宗家で「龍正館」館長の坂口行成龍凰師範は次のように証言する。
「目の色が変わった。(関取に)復帰した(昨年)名古屋場所あたりからね。やはり家族の存在が励みになっているんだろうし、もう一度立ち上がるきっかけを自分でつくったんじゃないかな。普段の振る舞いが落ち着いてきたし、子供から大人に脱皮できなかったのが立派に大成したと思う」。武道の達人も心の成長に太鼓判を押している。
今場所は横綱照ノ富士(伊勢ヶ浜)が休場し、大関正代(時津風)の陥落が決定した。3場所連続の平幕優勝は史上初の異常事態。来場所は1横綱1大関となり、土俵は大きな過渡期を迎えている。新たな大関候補として期待を背負う阿炎は「来年はもっと力強い相撲が取れるようになりたい」。問題児から優等生へ生まれ変わった男は、表情を引き締めた。












