法廷の中心で、愛をさけぶ――。「永遠の0」などで知られる作家の百田尚樹氏(60)が2日、東京地裁で開かれた“殉愛裁判”に証人出廷した。これは故やしきたかじんさん(享年64)と妻さくらさんの闘病生活を描いた同氏の著書「殉愛」で名誉を傷付けられたとして、たかじんさんの長女(43)が発行元の幻冬舎を訴えたもの。百田氏は原告代理人に食ってかかるなど“らしさ”を見せ、一部で“後妻業”とやゆされるさくらさんについても「いまでも信用している」と即答した。

“百田劇場”だった。

 2014年1月に亡くなったたかじんさんと妻さくらさんの献身的な看病を描いた「殉愛」。ノンフィクションをうたい、同年11月に出版されるや、30万部を超える大ベストセラーとなった。

 さくらさんが美化される一方、激しくディスられた(侮辱された)のがたかじんさんの長女、母親ら親族。同書では長女について「会えば金を無心する」というような記述も。こうした表現が今回の名誉毀損訴訟につながり、長女側は幻冬舎に出版差し止めなどを求めている。

 百田氏は黒のスーツ姿で出廷。のっけから早口でしゃべり出したため、裁判長から「もう少しゆっくり」とたしなめられ「これでもそうしてるつもりなんやけど」とボヤいた。

 争点は長女に対する同書の名誉毀損部分の取材が十分だったかどうか。原告代理人の的場徹弁護士は、百田氏が長女側に一切取材していないのに、親子に「確執があった」と書いたことを糾弾。百田氏は「確執そのものは(本の)テーマではない。晩年の孤独がテーマ」と主張し、長女を取材しなかった理由について「聞いたところで、本当のことを言うのか?という思いがあった」と述べた。

 その後も的場弁護士の追及は続く。口調はいつも以上に激しく挑発的で、百田氏のヒートアップを狙った作戦であることは明白だったが…。

 百田氏は乗っかった。ある週刊誌記事に同氏が“圧力”をかけたと再三突っ込まれ「それとこれ(裁判)、何の関係が?」「さっきからうその質問ばかり。何言うとんや!」と声を荒らげる場面も。同氏が「さあこれから」と話し始めた矢先に、的場弁護士が「はい、もういいです」と強制終了を連発したことにもイラ立ちを隠せなかった。

 一方で、さくらさんのことは最後までかばい続けた。同書の出版直後から数々の疑惑が浮上し、ネット上ではたかじんさんの遺産を狙った“後妻業”とやゆする声も上がった。昨年2月には反証本「百田尚樹『殉愛』の真実」も出版されている。

 それでも百田氏は「彼女はたかじんさんの膨大なメモ、資料を持っています。第三者はみんな『心からたかじんさんのことを思っている』と言ってますよ。後妻業だという報道もあるが、これらは笑止」と力説。的場弁護士が「はい、いいです」と強制終了してもなお「金目当てとか言うとるけど、8億の遺産のうち6億寄付しとるんですよ」と止まらなかった。残りの2億円でも大層な額ではあるが…。

 とにかく百田氏の忠信は不変だ。「現在もさくらさんを信用しているか?」と問われ「変わりません。いまでも『殉愛』書けますねぇ」と即答。

 これには「『殉愛』の真実」の執筆者の一人で、本来、百田氏とは敵対関係にあるライターの西岡研介氏も本紙に「正直、感動した。まだ信じているとは。本当の殉愛は百田氏とさくらのことやったんや」と声を上げた。

 出版関係者も「当初、さくらさんをかばってきた幻冬舎の関係者も、最近は距離を置いていると聞いている。百田氏もようやく『目を覚ました』と聞いていたが、違った。まさに殉愛」と話す。

 次回作にしてみてはどうか?