決戦の見立ては――。立ち技メガイベント「THE MATCH 2022」(19日、東京ドーム)で実現する〝キック界の神童〟那須川天心(23)とK―1のエース・武尊(30)の頂上決戦を、K―1創始者の石井和義・正道会館館長(68)が徹底解剖した。判定決着では那須川有利としたものの、状況次第では武尊に勝機があると断言。果たしてその根拠とは?


 いよいよ迫った頂上決戦の行方について、石井館長が口を開いた。まず、那須川と武尊が高いレベルで拮抗しているとした上で「判定になると天心選手の方が有利かなっていう気がするんですよ。出入りがあるんで」と予想する。

 完全決着ルールとして採用された3ラウンド(R)プラス延長1Rの間にダウンする場面がなければ、那須川に軍配が上がるとした。

 ただし、これも展開次第では一転する。「逆に武尊がガンガン出ていってプレッシャーをかけて打ち合いになれば、全く分からないですよ」とし、武尊にも十分勝機があると見ている。

 もちろん、その根拠もある。「天心選手はあまり打たれてないし、そんなに打たれ強くはない。試合を見ていても『あ、危ないな』というのはあるので。武尊は打たれ強いというか、むしろ打たれてからプチっといくので、(ポイントは)そこかな」と指摘した。

 また、石井館長は前日58キロ、当日62キロという契約体重にも注目。「そこまで体重を気にしてるっていうのは、天心選手側にプレッシャーがあるということ。僕は面白い試合になると思いますよ」とにらむ。

 一方で武尊側にも懸念材料があるという。「武尊君のSNSを見ている限り、ミット中心のように見えるのがちょっと心配なんですよね。試合も遠ざかっているから。いろんなタイプとスパーリングできているかどうか。実際はやっていて、隠しているだけならいいんですけど…」

 では、決戦後の格闘技界はどうなるのか? 19日をピークに、近年まれにみるお祭り騒ぎになることは必至。問題はその後だ。今大会では那須川VS武尊以外にも野杁正明VS海人など夢のカードが多く実現したことで、今後は業界全体が沈んでしまうのではないかと不安視する声もある。

 そこで石井館長は「ビジョンがあるから戦いがある。つまりTHE MATCHの後、自分たちは何をするかというのをファンに明確に伝える努力をしないといけないんです。それをTHE MATCHの場でやってもいい。新たな戦いを見せないと」と力説する。

 2002年8月、国立競技場に10万人を集めた「Dynamite!」では、バルセロナ五輪柔道男子78キロ級金メダルの吉田秀彦が、ホイス・グレイシーを相手にプロ格闘家デビュー。ボブ・サップがアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラと熱戦を繰り広げ、その後に人気が爆発した。未来を示したことで、格闘技ブームを加速させた実績がある。

 だからこそ、今大会でも「続き」を見せる必要があるという。今後につながるヒントが隠されているのが、今回の大会名だ。「タイトルに『2022』とつけている以上は次があるんじゃないか。そういう機運ができたと思うんです」と継続開催を勧める。

 ここで重要になるのが、その頻度だ。「やりすぎたらダメです。プロレスもそうじゃないですか。結果、片方が潰れることになりかねない。UWFもだし国際プロレスもそうだった。(ジャイアント)馬場さんはやらなかったから全日本は残った」とした上で「やるからにはスターがそろわないと無理でしょう。いきなり1年で武尊級のスターが生まれるはずはない。だから2年でも4年でも待てばいい。今回、天心選手が言い出してから実現まで7年かかったんだから7年に1回くらいでもいい」と提言した。

 頂上決戦後の格闘技界は、決して悲観する材料ばかりではない。「一人では無理でも、何人かでお客さんを集められるような選手は出てきている。当分は盛り上がるんじゃないですか」。業界全体が上昇気流に乗ることを願うばかりだ。

 ☆いしい・かずよし 1953年6月10日生まれ。愛媛・宇和島市出身。14歳のころから空手を始め、16歳で極真会館芦原道場入門。22歳で極真会館芦原道場関西地区総責任者になり5万人に指導。27歳で新日本空手道連盟正道会館を創設した。93年にK―1グランプリを開催。2002年8月の「Dynamite!」に10万人を集めた。現在も正道会館館長として精力的に活動している。