山口県阿武町が誤って振り込んだ給付金4630万円の一部を使用したとして、電子計算機使用詐欺容疑で同町の無職田口翔容疑者(24)が逮捕された事件を巡り、花田憲彦町長が24日、町内で記者会見し、約4299万円を法的に確保したと明らかにした。今回の事件では、田口容疑者が4630万円を「オンラインカジノに使った」と話したことでカジノに注目が集まったが、業界関係者は騒動をどう見ているのか。

 田口容疑者の代理人弁護士によると、同容疑者は口座に振り込まれた4月8日から19日までの間に計4633万円を出金。主な出金先は国内の決済代行会社3社で、それぞれ約3592万円、300万円、400万円を送金していた。ほかに約340万円のデビット決済もあった。

 町が国税徴収法と地方税法に基づいて差し押さえや取り立てを決済代行業者に示し、回収手続きを行ったところ、3社が20日、町の口座に入金した。デビット決済分は回収できていないという。

 同容疑者は調べに対し、「海外のオンラインカジノに使った」と供述している。カジノを含む統合型リゾート(IR)誘致が最終段階を迎える中で、今回の事件でカジノに対するマイナスイメージが増幅された可能性もある。カジノ業界関係者は今回の事件をどう見ているのか。

 カジノの本場・米国ラスベガスでディーラーとして10年以上のキャリアを持ち、現在は「IR Gaming Institute Japan」代表として、世界で通用する即戦力の育成に取り組んでいる片桐Rocky寛士氏は「ツイッターなどで、マイナスイメージのコメントをされている方もいますが、そういう方はもともとカジノにいいイメージを持っていないですからね。私としては、今回の騒動があって良かったと思っています」と話す。

 良かったとはどういうことなのか。一つは今回の騒動で、オンラインカジノに規制の動きが見込めることだ。オンラインカジノはカジノ合法国のサーバーを使ってネット上でカジノをやらせるので、法のグレーゾーンになっている。

 片桐氏は「コロナのご時世もあってオンラインカジノがはやっていますが、海外にサーバーがあって、それを裁く法律がないのが現状です。今回の件で法規制も始まるでしょう」と期待する。

 ほかにも理由がある。オンラインカジノの中には、SNSのインフルエンサーに「オンラインカジノで儲けました」などと宣伝してもらって入会者を募り、入会すればインフルエンサーにお金が落ちるステルスマーケティングのような仕組みもできているという。

「インフルエンサーの若者はオンラインカジノがグレーなんて知らないし、サイトにも『合法』とあるので入会する人もいる。今回の件でそういう若者が目覚めるキッカケになった。実際に私の周りにも『今回の件でやめました』という声もありましたので良かったと思います」

 そもそも、ひと口にカジノといっても、片桐氏が関わってきたカジノとオンラインカジノはまったくの別物だ。

「批判する人は、カジノと聞いて単純に『お金を賭ける場所』と思っているでしょうけど、カジノIRはカジノだけじゃなく、他にもいろんなコンテンツがあります。お金に関してもクリアになっています。例えば、1億円を持っていけば、カジノ側が『このお金はどこから持ってきた?』とチェックする。証明できなければ受け取らない仕組みです。税務局への申請義務もある。一方で、オンラインカジノは単純にカジノだけ。オンラインがゆえに汚いお金も流れています」

 片桐氏の元にはオンラインカジノのPRビデオ作成などの依頼も来るというが、「私は将来的に日本にできるカジノIRで働く人材育成をしているので、グレーな部分が見えるところとは関わり合いたくないし、無視しています」と語る。

 また、片桐氏自身も、更新が滞っていたブログが何者かに乗っ取られ、オンラインカジノへと誘導するようなサイトに書き換えられる被害にあっているという。

 玉石混交の“カジノ界”が、今回の騒動で浄化されることへの期待感が強そうだ。