【マンデー激論】バイデン米政権のロシア観は歪んでいる。3日、米政府は、ロシアが情報操作を行っていると非難した。
<米国防総省のカービー報道官は同日、「ロシア政府には、一つの選択肢として、ロシア領内またはロシア語話者に対する偽の攻撃を演出する計画がある」と述べた。計画される映像には、遺体や、嘆く演技をする俳優、攻撃により破壊された現場などが含まれるという。ウクライナ軍の兵士が西側諸国から提供された兵器を手にしているような描写もあるという。(中略)米政府は一連の情報が事実である証拠については明らかにしていない。米国務省のプライス報道官は同日の記者会見で「これは米政府が機密解除をした情報だ」と述べ、「ロシアが作戦を進めるのを抑止するために公表した」と説明した>(4日「朝日新聞デジタル」)
プライス報道官はインテリジェンス情報だと主張するが、証拠を提示しない限り信用できない。動かざる証拠を米国が握っているならば、外交ルートできちんと抗議すべきだ。マスメディアを通じた非難外交は情勢を悪化させるだけだ。バイデン政権の対ロシア外交にはアマチュアのような稚拙な手段が目立つ。
ちなみにこの情報は、ロシアでも広く報じられている。ロシアでは、米国が漫画のような陰謀論を展開しているという受け止めが主流だ。インテリジェンス戦争におけるプロパガンダ(宣伝)の大原則は、相手の認識に変化を与えて、わが方に有利な状況を作り出すことだ。
米国の宣伝の結果、普通のロシア人が米国に対する反感を増し、米国のこの種の発表は謀略であると受け止めるようになる。情報戦としては、あまり上手なやり方ではない。もっとも米国の宣伝工作は、対象国よりも米国内を意識している。ロシアは危険な国家で、独裁者プーチンの圧制下で国民は苦しんでいて、マスメディアも萎縮しているという印象を米国民に定着させ、「ロシアという悪と戦う正義のバイデン政権を支持しよう」という気運を醸成しようと考えているのであろう。
こういう実態から乖離した米国の外交戦略に日本が付き合う必要はないと思う。ウクライナ問題は、日本の国益とは直接関係しない。当事国であるロシアとウクライナの間で解決に委ね、日本としては極力、中立的な姿勢をとるべきだと思う。
☆さとう・まさる 1960年東京生まれ。85年、同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省に入省。ソ連崩壊を挟む88年から95年まで在モスクワ日本大使館勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍した。2005年に著した「国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて」で鮮烈なデビュー。20年、菊池寛賞を受賞した。最新著書は池上彰氏との共著「激動 日本左翼史 学生運動と過激派1960―1972」(講談社現代新書)がある。












