日本相撲協会の北の湖理事長(享年62=元横綱)の急死から一夜明けた21日、角界は慌ただしく今後の対応に追われた。大相撲九州場所が開催されている福岡国際センターで協会理事や幹部が緊急会合を開き、12月22日に東京・両国国技館で協会葬を開くことを決定。また、事業部長の八角親方(52=元横綱北勝海)が理事長代行に就任することが承認されるなど、新体制へ向けても動きだした。「大黒柱」を失った角界は、ここからどこへ向かうのか――。

 北の湖理事長の死去に角界内は深い悲しみに包まれた。福岡国際センターの入り口には日の丸の半旗が掲げられ、親方衆や力士ら協会員が喪章を着けて弔意を示した。福岡市内の葬儀所に安置されていた故人の亡きがらは東京へ向けて出発。霊きゅう車は途中、福岡国際センターの正面玄関に横付けされ、出迎えた協会幹部や大勢のファンが突然の別れを惜しんだ。


 協会は12月22日に東京・両国国技館で協会葬を行うことを決定し、八角親方の理事長代行の就任も承認された。来年1月の初場所後に理事改選を控えており、理事の経験も豊富な八角親方がそのまま新理事長に昇格する可能性が高い。そんな体制の変化で無視できないのは横綱白鵬(30=宮城野)に及ぼす影響だ。


 白鵬は急死した協会トップに対し「誰よりも力士のことを一番に考えてくれる理事長だった。本当に素晴らしい人」と素直な敬意を口にした。ただ、何よりも「国技の伝統」を重んじていた北の湖理事長とは、考え方に“水と油”ほどの違いがあったことも確か。白鵬が10日目に奇襲の「猫だまし」を見せると、北の湖理事長は「横綱としてやるべきじゃない」と不快感をあらわにした。


 また、白鵬は「同じ大横綱として理事長から一代年寄をもらいたかった。国籍の問題は本人の問題」と本音を吐露した。「一代年寄」とは著しい功績を残した横綱が、引退後に力士名のまま親方になれる制度。その条件に優勝回数はないものの、白鵬は「20回優勝をクリアしてるわけですから。いつもらってもおかしくない」と“勝手な解釈”で正当性を主張した。確かに大鵬の優勝32回を超えるV35を達成しているが、親方になるには「日本国籍を有する者に限る」との規定がある。


 かねて白鵬はモンゴル国籍のまま親方になる希望を公言しており、これだけ大相撲に貢献してきたのだから“特例”を認めてほしいとの立場だ。だが、北の湖理事長は最後まで外国籍の親方を認めない方針を堅持。国籍で区別する是非は別にして、あくまで「国技の伝統」を重視した。もちろん、白鵬も現状では自らの希望が通らないことは理解していたはずだ。


 しかし今後は、白鵬の“暴走”に歯止めが掛からなくなる可能性もある。北の湖理事長は優勝24回の大横綱だけに、白鵬もリスペクトする意思を示してきた。八角親方の優勝8回も十分に立派な成績だが、優勝35回の白鵬はどう思うのか。土俵での勝手気ままな振る舞いに拍車がかかり、この日のように「一代年寄」を声高に要求する行動に出てもおかしくはない。


 理事長代行に就任した八角親方は「理事長を手本にしなければいけない。(北の湖理事長の)おかみさんの話では、理事長が私に対して『(現在の協会の方針から)ブレずに頑張れ』という言葉を残していたそうだ。そういうことを思いながら頑張っていきたい」と話したが…。北の湖理事長と同様に、毅然とした態度を貫けるのか。