ドラマライター・上杉純也氏がドラマ制作者に作品への思いや制作秘話を聞くインタビュー企画「ドラマの仕掛け人に聞く」が今月からスタート。第1回は現在放送中の「まっしろ」、4月から放送開始の「ヤメゴク〜ヤクザやめて頂きます〜」を担当するTBSのプロデューサー・植田博樹氏が登場。終盤戦を迎えた「まっしろ」や主演を務める女優・堀北真希の魅力、さらにこれまで仕事をしてきた女優についての思いも明かしてもらった。


 ——ドラマ「まっしろ」は脚本を担当されている井上由美子さんのお父さんが入院されたときの体験談が元になっているとお聞きしました

 植田氏:企画の中身に関してはそうですね。2012年4月に「ブラックボード〜時代と戦った教師たち〜」というスペシャルドラマを放送したんですが、それを井上さんと作っていたときに「“黒”の次はじゃあ“白”かな」みたいな話になりまして。白いイメージから話はナースにつながるんですが、実は井上さんは、お父さんが入院していた際に日記を書かれていたんです。そこに残されていたのが“ナースの人にどれだけお世話になったのか”ということだったんですね。僕らは入院してみなければ、やっぱりお世話になるのはお医者さんだよねって思っているけど、いざ入院しちゃうと、ナースの存在感ってすごく大きいんだなっていうようなところからスタートしたっていう感じです。

 ——舞台になってる病院はセレブ病院という設定ですね?

 植田氏:実際にセレブ病院といわれる病院もありますが、劇中に出てくる病院の様子はおおむね架空ですね。日本でああいうファーストクラスのお客さん向けみたいな病院って、まだほとんど成立してないので。自由診療みたいなものは多少ありますけど、やっぱり医療費って保険の利く、利かないが大きいじゃないですか。そのあたりのコンセプト、“本当のホスピタリティーとは何か”みたいなことに踏み込んでみようという意図があったので、ビジュアルだとか部屋もホテル並みの感じになっているんです。

 ——現在、実際にはナースキャップをかぶっていない病院のほうが多いんですが、今回の劇中では、ナースキャップをあえてかぶっているっていうのもホスピタリティーの面を重視したという点が大きいワケですね?

 植田氏:そうです、そうです。ホームページの最初に「このドラマをご覧になる前に」っていうお断りがあるので、そこを見ていただければ分かると思うのですが、ビジュアルというか、見た目も含めて、ホスピタリティーなんだっていうことですよね。病院へ取材にうかがった時にお話を聞いていると、ナースみたいな方がやってきて、この人、ドクターだったのか!?みたいな。そういうことがあったりして。ちょっとクラシックなのかもしれないんですが、ナースキャップありにしたほうが、いいかなと思ってやったんです。

 ——キャスティングに関してなんですが、堀北さんを筆頭に、よくぞこれだけ綺麗なナースを集めていただいたなと。その中でも木村多江さんは、もともとフジテレビで放送された「大奥」に出ていたから、あえてリンクさせたということなのでしょうか?

 植田氏:実はそれは後で気づいたぐらいです。むしろ「ブラックボード」のときに、佐藤浩市さんの奥さん役を演じてもらって、すごく良かったので、それで多江さんの名前が上がったんですよね。だから、あとになって「あっ、そういえば『大奥』に多江さん出てたっけな」っていうくらいの感覚、イメージでした(笑い)。



 ——個人的には柳楽優弥さんのキャスティングが新鮮に映りました。最近だとドラマの「アオイホノオ」には出てましたけど、ドラマというよりは映画の人というイメージが強かったので

 植田氏:柳楽くんに関しては、井上さんが「誰か新鮮な男の子はいませんか」みたいな話をされたんですね。新鮮な人でネームバリューもあって…って。そこで、僕はちょうど映画の「包帯クラブ」でお仕事をしていたので、柳楽くんがいいんじゃないかなと。最近だと映画「クローズEXPLODE」もなかなか面白い役だったし「アオイホノオ」はまだ始まるか、始まらないかぐらいの時期だったんですけど、その噂を聞いていて、テレビドラマもやるんだなと思って。マネジャーさんに聞いたら、ドラマもやりますよっていうことだったんです。

 ——最初に“白い大奥”と宣伝されていた分、実際に見た視聴者の間ではかなりギャップがあったという声もあります

 植田氏:それはいろいろ聞きました。「大奥」というから、もっとドロドロしたドラマをイメージされてたのかもしれないですね。ただ「大奥」と言いながらも、大奥には青春もあったはずだし、友情もあったはずだし、悲劇と派閥争いだけではないんじゃないの、みたいなところはやっぱりあったので。それを描こうと思ったんです。とはいえ、現実を直視すると、見ている人にとっては“大奥”という言葉はもはや一つのジャンルなんだなと。期待されるドラマの固定イメージがあるということを散々思い知ったという感じです。そんなに世間とイメージのギャップがあったのかと。

 ——とはいえ、脚本が井上由美子さんですから、最後はただでは終わらない

 植田氏:はい。割とシリアス路線に実は行くんですよ。そこはおっしゃるように井上さんの脚本ですからね。通常のコミカルな作風だけで終わるというワケには当然行かないというか。8話、9話、10話辺りは割とシリアスな話ですね。

 ——かなりの展開を期待していいんでしょうか?

 植田:医療モノっていうのは、結局、命を扱う話じゃないですか。ですから一応、尊厳死の問題に踏み込もうかなと思ってます。海外では尊厳死をどうするかっていう中で、そこは踏み込んでいる国もあったりしますよね。ですから、日本で、もし、こういう高いホスピタリティを提供して、とにかくお客さまの言う通りにしますっていうような病院が、尊厳死の問題に直面したときにどうするのかと。そういうお話を描きたいなと。ただ、あまりにもテーマが大きいので。だから本当にこれがちゃんと消化できるのかというところでちょっと今、正直、迷ってますけれどもね。そうはいっても、最後にとんでもないことをやるっていうのが、井上さんと一緒にお仕事をする醍醐味でもあるので、そういう野心みたいなものは常に持っていたいと思っています。



 ——「まっしろ」では中盤に木村多江さんと水野美紀さんのポジションチェンジという展開が待っていましたが、これから先の終盤のキーマンというと、誰になるんでしょうか?

 植田:一番意外な人物は石黒賢さん演じる佐藤正隆です。「えーっ、この人こんなこと考えていたのか?」っていうことを、あとから僕も知る、みたいな(笑い)。

 ——今回、主演している堀北真希さんですが、実は彼女に最初に悪役を演じさせたのは植田さんだと思うんですよ。劇場版の「ATARU」ですね。で、この堀北さんに限らず“あの人にはこんな役を演じさせるのか!?”っていう驚きが植田さんの作品には多いんです。例えば、堀北さんの場合だと、何かきっかけみたいなものがあったんでしょうか?

 植田氏:それはですね、人って、歯をむいた時に全部銀歯だったら怖いなというふうに常々思っていて。堀北さんみたいに普通ににこやかにしていると、あんなに存在自体が真っ白な女の子が、歯をむいた瞬間に全然違う感じになるっていう。それを狙ってはいたんですよね。「ATARU」でやるかどうかっていうのはちょっと迷ってはいたんですが、そういう意味でいうと、サイコパスだったりとか、そういう感じの役をやってもらいたいなというふうには常々思っていました。だって一番意外じゃないですか。今、ピュア系な女優さんの代表格というと、堀北さんと綾瀬はるかさんが双璧のような気がするんです。新人やニューカマーだったら、広瀬すずちゃんみたいな子はまた別にはいますけど。でも、ある程度のキャリアがあって、そういう吉永小百合さん的ポジションにいるっていうのは、もうこの2人だけだと思います。ですから、ちょっとひねったような役も演じてもらいたいなとは思ってましたし。

 ——水野美紀さんなんかも「踊る大捜査線」(フジテレビ系)以降、割とサバサバした役が多い印象なんですが、昨年植田さんがやられた「家族狩り」ではあえて世間のイメージとは真逆の役でしたよね。

 植田氏:水野さんの場合、ものすごくオンナオンナした魔性みたいな。魔性というか、そういう悩みを持っているみたいな感じの役で起用しようかな、とずっと思っていたんです。「家族狩り」では水野さん以外にもそういうひねりを割といろいろ入れてみました。浅田美代子さんのダメな母親役っていうのも、かなり前から狙っていたりしたので。



 ——そういう意味でいうと、今回の「まっしろ」での志田未来ちゃんのキャラクターも練りに練られていた感じですよね。あの東北弁をしゃべってる感じがインパクト大です

 植田氏:志田さんが演じる松岡菜々は医療オタクという設定だったんですけど、松岡をなまらせることにしたのは、実は顔合わせの前夜なんですよ。井上さんから「なまらせたほうがいいかな」っていう電話があって。しかも、宮城県のイメージだって言われたので、宮城県出身の役者さんを見つけて、テープに一部だけ宮城県の古いめの方言でセリフを吹き込んでもらったんです。「その一部だけを本読みのときにやってください。で、どっちがいいか決めます」と。結果、「あっこれいいね!」となって、未来ちゃんのセリフが全部、気仙沼弁に変わったわけです。今回は割とギリギリまでキャラクター付けをしていて。松岡菜々も着ている私服は下北沢に住んでて、美大とかに行ってる人たちの間でのモテ服みたいな感じっていう設定なんですね。

 ——ここで主演の堀北さんについておうかがいしたいのですが、植田さんから見た堀北さんの魅力を教えてください

 植田:堀北さんはね、やっぱり“品”がすごくあるので、今回のようなやんちゃなキャラクターを演じてもらっていても、その品が消えないんですよね。これは僕の感覚的なものなんですけど、松岡修造さんもすごく品があるので、どんなにやんちゃなことをやっていても、嫌な感じがしないんです。あとは、堀北さんの場合は「自分が、自分が」っていうタイプではないんですよね。私生活の話になるんですけど、ずーっとこう、もうお坊さんみたいな、そういう生活ですからね。食に気をつけ、風邪引いて迷惑かけないように健康に気をつけ…って、すごくストイックなんですよ。そういうふうな感じがあったりするから、堀北さんの場合は「今回の役はこんな感じなんです」「コミカルなんです」「割と空気を読まない“非モテ”なんです」っていう話をしたら、それをコンコンと体現されるんですね。だから堀北さんってすごい演技派なんだっていう、それは声を大にして言いたいですね。劇場版「ATARU」のときのマドカのような悪役も演じてもらいましたけど、もっともっといろんな引き出しがあるので、ぜひともそういうところで、また新しいチャンスを頂きたいなというふうには思っていますね。

 ——堀北さんの魅力をうかがったところで、ちょっと話を変えて、これまでに植田さんが、お仕事をされてきた女優さんの印象や魅力といったところをお聞きします。まず「ケイゾク」の中谷美紀さんと「SPEC」の戸田恵梨香さんです。この2人は、演技を追求する姿勢がすごくストイックな感じがして、ある意味似ている気がするんですが? 妥協しないタイプといいますか

 植田氏:えーっとですね、中谷さんや戸田さん、渡部(篤郎)さんに加瀬(亮)さんっていうメンバーは、こちらが見ても「大丈夫?」って、心配になるぐらいの役の突き詰め方をしますよね。ですから、「ケイゾク」にしても「SPEC」にしても、監督の堤(幸彦)さんがそういう役者をうまくリードしてくれて、着地するべき方向へ導いてくれたという感じなんです。



 ——松雪泰子さんも似たタイプでしょうか?

 植田氏:そうです、そうです。「家族狩り」のときの松雪さんなんかは途中、痛々しくて話しかけにくかった思い出があります。でも、撮影が終わって飲みに行きましょうといったら、バカ話をたくさんするんです。それでも、台本の読み込みがハンパなくて、それで台本を読んでいて、ここでこう泣くんだとか、ここでこう怒るんだとかっていうのを自分の車の中でシミュレーションして、涙が出てきたりすると目がはれちゃうから、その涙が乾くまでなかなか車から出てこられなかったりとかっていうようなことがあったりするんですね。だから、今、話に出てきた人たちって、本当に役柄を突き詰めて考えて演じてくれているからこそ、すごく僕らものめり込んで作っていけますし、のめり込んで作った台本にグイグイグイグイっていうふうな感じでやっぱり入っていってもらえるし…っていううれしさがありますね。

 ——柴咲コウさんはどうですか?

 植田氏:柴咲さんも突き詰める方ですが、役者としてだけではなく番組全体のイメージを持つプロデューサー的資質が加わります。役とか作品だとかを一歩引いて見てるんですよね。“この作品はこういう方向に向かっているから、これはOK、これはNG”みたいなジャッジングが素晴らしいんですよ。だから「GOOD LUCK!!」のときも「安堂ロイド」のときも、木村拓哉さんは彼女のことを“ミス羅針盤”って呼んでましたよね。つまり彼女のコンパスはすごく安心だから、それを信じ自分たちはかじを切ればいい、みたいなことをよくおっしゃってましたよ。

 ——今、一番注目されている女優さんとか、仕事をしてみたいという女優さんはいらっしゃいますか? そもそも植田さんの作品って、中谷さん、戸田さん、松雪さん、そして今回の堀北さんと、女優さんに共通した部分があるような気がします

 植田氏:好きな顔が似てるんですよ(笑い)

 ——中性的な感じですよね

 植田氏:あの〜僕はね、顔でいったら優木まおみさんみたいな感じが好きなんですよ。でも、なんでかドラマのときだけ、瞳の力が強い人にするのかが自分でも不思議で…。それは多分、少し自分からは遠い人のほうが、ドラマとしていいのかなというふうに思っているんだと思います。そういう意味で、注目している女優さんというと、栗山千明さん。もう一度ちゃんとやってみたいとは思っています。栗山さんの目とかすごく好きだし。だから「家族狩り」みたいな、ああいうふうな感じで、いわゆるエキセントリックではないような感じの、生活感があるような役で栗山さんときちんとやってみたいなと思いますね。

 ——最後にお話しできる範囲で、今後の作品の予定を教えてください

 植田氏:そうですね、もう発表されていますが、4月スタートで大島優子さん主演の「ヤメゴク〜ヤクザやめて頂きます〜」(木曜21時〜)という刑事ドラマを予定しています。堤さんが監督を務める新シリーズです。脚本を担当してくださるのは「ATARU」の櫻井武晴さん。警視庁組織犯罪対策部(いわゆるマル暴)内の「暴力団離脱者相談電話」で通称“足抜けコール”が舞台のドラマです。ぜひ、ご期待ください。でも、その前にまずは「まっしろ」の終盤戦をよろしくお願いします。

☆植田博樹(うえだ・ひろき)=1967年生まれ。兵庫県出身。90年にTBS入社。現在はTBSテレビ制作1部所属エキスパート職。これまでの主なプロデュース作品は「ケイゾク」シリーズ、「GOOD LUCK!!」、「SPEC」シリーズ、「ATARU」、「安堂ロイド〜A.I.knows LOVE?〜」、「家族狩り」など。4月から「ヤメゴク〜ヤクザやめて頂きます〜」スタート予定。