「秘密兵器」で逆転Vだ。大相撲初場所9日目(17日、東京・両国国技館)、横綱照ノ富士(30=伊勢ヶ浜)が幕内北勝富士(29=八角)を下手投げで退け、1敗を堅守。全勝の関脇御嶽海(29=出羽海)を1差でピタリと追走している。一方で、伊勢ヶ浜部屋では安治川親方(元関脇安美錦)が所属力士のために今場所から映像解析技術を導入。〝角界初〟となる画期的な試みが、横綱の白星にも一役買っている。

 照ノ富士は1敗を守った取組後に「よかったと思う。落ち着いてやろうと思っていた。まだ場所が終わったわけじゃないんで、残りを頑張ります」と表情を引き締めた。全勝を守る御嶽海を1差で追走してプレッシャーをかけながら、虎視眈々と逆転の機会をうかがっている。

 そんな中、横綱にも追い風となりそうな画期的な試みを、部屋付きの安治川親方が導入した。部屋関係者が「角界では初の取り組み」と話すのは、米国発祥の映像分析ツール「Hudl(ハドル)」の活用だ。映像データを蓄積してタグ付けすることで短いクリップで切り出せる「スポーツコード」、作成した映像をスマホなどで共有できる「ハドル」という2つのソフトを使用。

 映像でのデータ解析が格段に効率化されることから、サッカー英プレミアリーグ、米プロバスケットボールNBA、アメリカンフットボールなど多くの分野で活用されている。同部屋でトレーナーを務める篠原毅郁氏もアナリストとして他競技で使用。トライアルとして、すでに初場所から同部屋の十両以上の関取を対象に導入している。

 ハドル社の日本担当を務める高林諒一氏は「お話をうかがう中で(大相撲では)映像解析の活用が進んでいないというのが課題としてお持ちなのかなと感じた。ユーチューブなどで限られた映像を自分たちで探して見ているという形だったのが、分かりやすくまとまった映像を好きな時、場所で見ることができることなどがメリット。データが蓄積されれば細かい分析もできます。日本の国技でサポートできることをうれしく思う」と説明した。

 使用感も上々で、安治川親方は「使いやすい。アマスポーツでも取り入れているので、この先はデータもとても重要になってくると思う。それで勝てるというものではないが、今までやってきた稽古を大事にしつつ、それにプラスアルファで力になれれば」と語った。照ノ富士も対象となっており「動作の確認で使っている。照ノ富士はそれでなくても(普段から)いろいろ映像を見て研究しているので」(同親方)というが、勝利へのアシストとなることは間違いない。

 同親方は今後、本格的な導入を予定しており「稽古プラスで活用できたらいい。希望、ワクワク感はある」。今の横綱の強さに新技術が加われば、まさに〝鬼に金棒〟となりそうだ。