大相撲初場所(10日初日、東京・両国国技館)を前に、角界が激震に見舞われた。日本相撲協会は横綱白鵬(35=宮城野)が新型コロナウイルスに感染したことを発表。3場所連続で休場中の大横綱は、初場所の出場も絶望的となった。力士に陽性者が相次ぐ中でも白鵬の感染は衝撃的に受け止められており、協会内では〝最悪の事態〟までささやかれ始めている。

 ついに、大横綱までもがコロナ禍の直撃を受けた。白鵬は3日に嗅覚異常の症状があったため、4日に都内の病院でPCR検査を受検。5日朝に陽性であることが判明した。宮城野部屋の所属力士ら関係者全員もPCR検査を受けた。白鵬以外の力士にも陽性反応が出た場合には、所属力士全員が出場できなくなる可能性もある。

 白鵬は右ヒザの故障の影響で先場所の11月場所を全休。昨年5場所(5月の夏場所は中止)のうち4場所で休場し、横綱審議委員会からは横綱鶴竜(35=陸奥)とともに「注意」の決議を受けた。再起を目指す大横綱は12月に国技館で行われた合同稽古に参加。綱取りに初挑戦する大関貴景勝(24=常盤山)らと精力的に稽古をこなすなど、復帰への意欲を見せていた。

 しかし、本番直前の時期になってコロナ感染が判明。軽症で済んだとしても、隔離期間などを考慮すれば事実上、出場は絶望的な状況となった。芝田山広報部長(58=元横綱大乃国)は「(白鵬は)病院に入院した。特に高熱が出ているという話は聞いていない。(初場所出場は)もう難しい。それはないと思う」と断言した。

 角界では年明けに荒汐部屋で幕内若隆景(26)ら計12人の集団感染が発生したばかり。そして、今度は第一人者までもが不在となる異常事態となった。協会内でも「白鵬感染」の一報は衝撃的に受け止められている。角界関係者からは「まさか横綱まで感染するとは…。もう誰が感染していてもおかしくない。場所中に集団感染が起きれば、15日間を乗り切れなくなる」と〝打ち切り〟の可能性もささやかれ始めた。

 昨年9月の秋場所前には玉ノ井部屋で力士24人が集団感染。この時は所属力士28人全員を休場させることで封じ込めることができた。しかし、初場所開催中にクラスターが発生すれば、感染の連鎖を完全に断ち切ることは困難。本場所そのものが立ち行かなくなる可能性もある。果たして、初場所は無事に千秋楽を迎えることができるのか。新年最初の場所で、いきなり暗雲が漂い始めた。