偉業達成の条件は――。フィギュアスケートのアイスダンスの〝かなだい〟こと村元哉中(28)と高橋大輔(35=ともに関大KFSC)が北京五輪出場を視界にとらえた。グランプリ(GP)シリーズ第4戦のNHK杯(東京・代々木第一体育館)では日本歴代最高点をマーク。結成時の「夢」だった大舞台が現実味を帯びる一方で、まだまだ伸びしろはある。さらなる得点の上積みと五輪表彰台の可能性を専門家に聞いた。

〝かなだい〟はNHK杯で北京五輪代表1枠を争う小松原美里&尊(ともに倉敷FSC)を上回る6位で日本歴代最高点をマーク。大きな進化を見せつけた。男子シングルで数々の栄光を手にした高橋にとって、アイスダンス転向2季目で五輪出場が手に届く位置まできた。

 元国際審判員でフィギュア界の〝生き字引〟杉田秀男氏は「シングルで世界を取った選手がアイスダンスで五輪に出場するのは聞いたことがない。本当にすごいことです」と舌を巻く。2010年バンクーバー五輪男子シングル銅メダルの高橋が仮にアイスダンスで表彰台となれば、もちろん史上初の快挙。果たして、その可能性はあるのか?

 今大会の優勝カップル、ビクトリア・シニツィナとニキータ・カツァラポフ(ロシア)とは約36点差で、フリーだけで約20点も開きがある。今後の得点上積みについて、村元はスケーティングや音楽との調和を表す演技構成点を課題に挙げ、高橋は「トップの人たちが稼いでいるGOE(出来栄え点)を上げたい」と話している。

 ジャンプがあるシングルは基礎点で大きな差がつくが、アイスダンスは演技構成点とGEOがモノを言う。あるフィギュア関係者は「アイスダンスはジャッジの心理が大きく影響するので、選手相場が大きく変わりづらい」と指摘。アイスダンスで全日本選手権4連覇の渡辺心氏も「あと3か月で五輪表彰台となるとハードルは高いですね」と冷静に分析した。

 それでも、渡辺氏はわずか1年で飛躍的な成長を果たした〝かなだい〟のポテンシャルに期待する。今回のNHK杯の演技を見て「ホールド、距離の近さ、つなぎのスムーズさがすごく良くなっています」と進化を絶賛した上で「(かなだいが)取り組んでいる方向性は間違っていない。これを継続していけば、演技構成点も上がっていくと思います」と期待を込めた。

 五輪最終選考は12月の全日本選手権(さいたまスーパーアリーナ)。そこでさらなる進歩を見せることができれば、北京での偉業達成も夢ではない。