また一つ、五輪の〝闇〟が浮き彫りに…。今夏の東京五輪・パラリンピックで選手村として使用される分譲マンション「晴海フラッグ」の購入者23人が売り主に対する民事調停を東京地裁に申し立てることになった。新型コロナウイルスの影響で五輪が1年延期されたことにより不利益を被った購入者は、補償を拒否する売り主に猛反発している。

 購入者側の代理人・轟木博信弁護士(35)は「今回は『コロナが悪い、売り主も悪くない、全員が被害者だ』という論調が主流ですが、コロナで唯一、得をしたのが売り主のデベロッパー」と主張する。マンションの売り主は不動産大手10社。このデベロッパーが東京都と賃貸契約を結び、さらに組織委員会に「また貸し」をするという複雑な構造だ。

 そして、今回の延期によって東京都から売り主へ約40億円が支払われたという。轟木弁護士は「すでに建物は完成している。維持費だってそんなにかからない。つまり、デベロッパーは追加作業をせず、ただで40億円を手に入れている。まさに〝濡れ手に粟〟といった状態。しかも、都民の税金ですよ」と疑問を投げかけた。

 また、選手村には特別な〝カラクリ〟があり、地権者、施行者、許認可権者が全て東京都になっている。轟木弁護士は「ウルトラCの超裏技で、ものすごい安い価格でデベロッパーに引き渡されました」と説明。東京都議会での審議、財産価格審議会の適切な手続きを経ないまま巨額の〝血税〟が売り主に流れたとして問題視している。

 ちなみに、今回の争点は「五輪延期決定に伴って売り主がさらに1年、東京都に土地を貸す法的な義務があったのか?」という部分。轟木弁護士は「その義務はなかった」と主張した上で「本来、延期に応じる必要がなかったのだから、そこで生じた損害を補償するのが筋でしょう。しかも、彼らは40億円をもらっている」と一歩も譲らない構えだ。

 民事調停は裁判と異なり、話し合いで円満な解決を目指す制度。ただ、言い分を聞く限りは穏やかではなさそうだ。