世界的な名指導者の素質あり――。男子テニス元世界ランキング4位の錦織圭(36=ユニクロ)の引退セレモニーが6日、現役最終戦となった木下グループ・ジャパン・オープンの会場である東京・有明コロシアムで開催された。日本テニス界の歴史を塗り替えてきたレジェンドは、ファンの前で万感の思いを語った。中学時代にともに米国に渡り、躍進の礎を築いた米沢徹コーチ(67)が取材に応じ、まな弟子との秘話を明かしつつ指導者としての成功にも期待を寄せた。

セレモニーで記念撮影する錦織圭(左)と妻の山内舞さん
セレモニーで記念撮影する錦織圭(左)と妻の山内舞さん

 錦織は自身の現役時代の映像がスクリーンに流れると「こうやって見ると、ケガが多いテニス人生だった」と感慨深げ。「テニスが大好きだし、まだまだやりたいとさっきの動画を見ていても正直思った。悔いもたくさん残っている。結果も、もうちょっと出したかったなという思いもあった。国枝(慎吾)さんみたいに金メダル、グランドスラムを取りまくる。そんなことはできなかった。でも、すごく楽しいテニス人生を送れた」と現役生活を振り返った。

 錦織は小学6年時に全国大会で優勝。その非凡な才能が認められ、中学2年時に盛田正明氏の支援を受けて米国・フロリダのIMGアカデミーへ渡った。その時期にコーチを務めた米沢氏は、日々の指導で感じた強みを「守備の堅さ」と強調する。「とにかくボールにくらいついて、返して返して我慢する。返すだけでは打ち込まれるが、それに徹して守るときは深く返すという能力が、他のどんな選手よりも優れていた」と評する。

 全盛期の錦織といえば、テンポの速い攻撃的なラリーが代名詞だ。米沢氏は「当時からどれだけ前で攻め込めるかを目標にしていた」と明かし、「普通の選手は、ミスりたくないから攻め込むのをちゅうちょしちゃうが、錦織の場合は1試合で100回前に出ることもあった。目標にしたら、それに向けて全力を尽くすのが彼のメンタリティーだった」と精神面の強さを説明する。

 他の選手との違いはコート上だけにとどまらない。「普通は子供だから休みの日でも外で遊んだり、動いたりしている。それで練習のときに疲れが見えたりするが、彼の場合は食べる以外は寝っぱなしくらい横になっていて、休むために全力を尽くすタイプだった」と証言。「たまに息抜きで観光に行くと、次の日に必ず高熱を出す。自分の体が弱かったのもあって、休むことも大事だと考えていたんじゃないかな」と幼いころからコンディショニングを徹底していた姿を懐かしんだ。

 ファンに多くの夢を与えた教え子へ「あれだけの功績を挙げているから、影響力を発揮してどんどんいろんなところに出て、テニス界を盛り上げてほしい」とエール。将来的には指導者に転身して手腕を発揮することも期待される。

「テニスがあれだけ好きだから。コーチも下から上までいろんな選手のレベルがあるので、中学生のコーチとかではないと思うけど、グランドスラムで活躍するような選手の最後の仕上げのところで力を発揮するようなことは期待できる」と4大大会など最高峰の舞台で選手を勝たせる〝名将〟の器と太鼓判を押した。

 この日、錦織は今後について「まずは少し休ませてください(笑い)」と宣言。そして「必ず戻って、何かはする。これから日本テニス、アジアのテニスがもっと強くなるように、自分もヘルプはしたいし、そういう未来をみんなで描けるように助けられたらと思う」と意欲を示した。

 日本テニス界のプリンスの今後が楽しみだ。