彼だからこそ伝えられる言葉がある――。テニス世界ランキング4位、全米オープン準優勝など、アジア人男子としては前人未到の成績を残してきた錦織圭氏(36=ユニクロ)が11日に都内で引退会見を行い、現役生活に別れを告げた。現男子日本代表監督で、デビスカップや2012年ロンドン五輪をともに戦った添田豪氏(42)が日本テニス界の未来を見据え、実績抜群の後輩に求める役割を語った。

男子日本代表の添田豪監督
男子日本代表の添田豪監督

 取材に応じた添田氏は、コート内外で感じてきた錦織氏のすごさを「どんなレベルになっても追求する力」と表現。「満足していない部分が謙虚さに出ている。有頂天になることもないし、一選手として尊敬していた」と人間性もたたえた。

 自身が代表監督に就任して指導者と選手という関係性になってからも、視座の高さは際立っていたといい「『こういうことはできるか』とか、環境の設定とか、トップ選手になったからこその視点で要求してきた。こちらとしても足りていなかったんだなと学びになった」と振り返る。

 ハードな練習と海外での経験を積み上げてきた錦織氏には、指導者としてのポテンシャルも十分。華麗な股抜きショットやドロップショットなどから、そのセンスが注目されることも多いが、添田氏は「結構、考えているタイプ。『フォアだったらこう打つ』とかを言語化できる」と証言する。

引退記念のダブルスの相手も務めた添田豪氏(左から2人目)
引退記念のダブルスの相手も務めた添田豪氏(左から2人目)

 指導力や求心力は、すでに代表チーム内でも証明済みだ。デ杯期間中には、錦織氏が後輩と積極的にコミュニケーションを取っていたことを明かし「試合に出られない時は、サポートで選手たちに声掛けしてくれた。『もっと楽しんで』とか『強気にプレーして』とか、別に難しいことは言わないし、誰でも言えることだけど、彼じゃないと伝わらない」と影響力の大きさを強調。続けて「あそこまで行った選手は他にいないから、言葉の説得力が間違いなくある」と太鼓判を押した。

 ひとくちに指導者といっても役割やスタイルはさまざま。「精神的なモチベーターになるのか、もうちょっと理論的になるのか、技術的なこととか、アイデアが良いとか。自分のタイプを追求しながら指導者になっていくと思うので、どういう形のコーチになるのかが楽しみ」と期待を膨らませる。

 その中で、指揮官が何より錦織氏に託したいと願うのが〝世界基準〟を注入する役割だ。「僕が求めるのは技術的にというより、もっと遠慮なく『トップ選手はこれをやっているから、こうしないと世界には通用しない』とハッキリ言う人。そうなってほしいなと思う」と熱く語り、次世代を強く引き上げてくれる日を心待ちにした。