【石原結實 食の金言】15世紀までのヨーロッパ人の大多数の死因は、壊血病であった。南欧以外では、野菜や果物が獲れず、そのため、ほとんどのヨーロッパ人がビタミンC不足に陥っていた。

 ビタミンCが不足すると血管が脆くなり、出血しやすくなる。また、白血球の働きが低下し、肺炎や敗血症などの感染症が起こりやすくなる。これが壊血病である。

 しかし、15世紀にコロンブスが南米からジャガイモをヨーロッパに持ち帰り、寒冷のヨーロッパでも生育することがわかり、ヨーロッパ人になくてはならない野菜になった。野菜や果物(とくにミカンやレモンなどの柑橘類)に多く含まれているビタミンCは、サツマイモやジャガイモにも果実類に負けないぐらい存分に含まれている。しかも、ジャガイモを加熱料理しても、デンプンが熱で糊化してビタミンCを包み込んで庇護するため、Cは破壊されない。

 ジャガイモに含まれる「K」(カリウム)は血圧を下げ、パントテン酸は消化促進、肉の中毒を解毒する。プロテアーゼ阻害物質は抗ウイルス作用を有し、クロロゲン酸には抗ガン作用がある。
 昔、ドイツではパンを買うお金もない貧乏人は、代わりにジャガイモを食べていたそうだ。よって、ドイツでは、ジャガイモは「貧乏人のパン」という別称がある。

 ジャガイモの含有成分を鑑みると、パンを食べる金持ちの人々より、貧乏人はきっと健康であったにちがいない。

 なお、日本名のジャガイモは、1598年、オランダ人がジャカルタから長崎の平戸に持ち込んだため、「ジャガタライモ→ジャガイモ」と呼ばれるようになった由。

 ◆石原結實(いしはら・ゆうみ)1948年、長崎市生まれ。医学博士。イシハラクリニック院長として漢方薬と自然療法によるユニークな治療法を実践するかたわら、静岡・伊豆でニンジンジュース断食施設の運営を行う。著書は300冊超でベストセラー多数。最新作は「コロナは恐くない 恐いのはあなたの『血の汚れ』だ」(青萠堂)。