安倍晋三元首相が8日に奈良県内での演説中に銃撃され死亡した事件は、日本の選挙のあり方に大きな影響を与えることになりそうだ。

 銃撃事件を受けて自民党をはじめ各政党はその日の選挙活動を取りやめたところが多かった。ある陣営関係者は「テロは連続することもあるので候補者、スタッフ、聴衆の安心安全がしっかり確保される状況になるまでは取りやめという判断をしました。『テロに屈するのか』との声もありますが、それは精神論にすぎない。少しでも危険があるなら避けるべきです」と理由は説明した。

 一方、この日、街頭に立ち続けたのが社民党の福島みずほ党首だ。報道陣の取材に対して福島氏は「警備をちゃんとしながら、あらゆる暴力を許さないと発言することも必要だと思っている」と、今だからこそ発信すべきことがあると訴えた。

 社民党は前身となる社会党時代の1960年に浅沼稲次郎氏が講演中に刺殺される事件を経験している。「そういう歴史を持っている政党ですから、ずっと身辺の安全については先輩たちも私もいつも危惧している。今日は驚いたが、表現の自由が大事だからこそ、暴力を許さないということを改めて伝えたい」と活動を続ける意義を強調した。

 選挙戦最終日の9日は各政党も選挙活動をする見込み。もっとも今後の選挙は今までと同じではいられない。政党関係者は「こんなことで影響を受けるのは不本意ですが、選挙は変わらざるを得ない。新型コロナウイルスで握手をしなくなるなど、政治家と有権者の距離が広がりましたが、事件を受けてもっと離れていくでしょう」と指摘した。

「SPの警戒レベルはこれまで以上になるし、候補者が聴衆に飛び込んで握手やグータッチして回るということも減る。有権者だって、例えば岸田文雄首相のような大物政治家が地元に来た時に『テロに巻き込まれたくないから近づかない』という判断にもなりかねない。民主主義の危機です。本当によくない方向に行っていると思いますよ」(前出の政党関係者)

 これまでだって選挙には危険が付き物だった。立候補経験者によると「酔っぱらいに殴られるのは何度もあるし、水をかけられたり卵をぶつけられたりもある。殺害予告や付きまといも経験しています」という。とはいえ命を奪われるとなると次元が違う。

 政治と国民の距離がより一層離れていきそうだ。