佐藤優氏 イランの核保有で中東に核ドミノの危機

2021年05月10日 16時00分

佐藤勝氏

【マンデー激論】米国がイランとの関係改善に乗り出した。この背後にモサド(イスラエル諜報特務庁)の働きかけがあると筆者は見ている。

 ロシア政府が事実上運営するウェブサイト「スプートニク」(日本語版)が、4月30日に米国の首都ワシントンで行われたバイデン大統領とモサドのコーエン長官との会談についてこう報じた。

<ジョー・バイデン大統領はイスラエル対外諜報機関「モサド」のヨシー・コーエン長官と首都ワシントンD.C.で会談し、イラン情勢を協議した。米国のニュースサイト「アクシオス」が情報筋による証言をもとに報じた。/アクシオスの情報筋によると、対外諜報機関「モサド」のコーエン長官は別件でワシントンD.C.を訪問中で、バイデン大統領との会談は4月30日になって急遽開かれることになったという。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はバイデン大統領との会談を前にイランに関する情報をコーエン長官に提供し、バイデン氏との会談後に長官から更新された情報を受け取ったとのこと。>

 イランの国家目標は、イスラエル国家を抹消することだ。イランが核兵器を保有した場合、イスラエルに対してそれが使用される危険をイスラエルは本気で感じている。事態をこのまま放置すれば、10年以内にイランが事実上の核保有国になる可能性をイスラエルは懸念している。イランが核兵器を保有すると、サウジはイランに対抗するために核武装するであろう。

 パキスタンは核保有国だ。しかし、パキスタンには核開発を行う資金力はなかった。パキスタンの核開発の資金提供を行ったのはサウジであるというのがインテリジェンスの世界では常識だ。

 サウジは、パキスタンの核兵器のいわばオーナーだ。イランが核武装した場合に、パキスタンからサウジ領内に複数の核弾頭を移動することを定めた秘密協定があるというのがイスラエルの見方だ。サウジが核兵器を保有すれば、アラブ首長国連邦(UAE)、オマーンなどもパキスタンから核兵器を購入するであろう。エジプトとヨルダンには自力で核開発をする科学技術的な基礎力がある。イランの核保有によって、中東で核のドミノ現象が起きる可能性が高い。

 イスラエルとしては、米国が対話戦術を巧みに用いて所与の条件下でイランの核開発を遅延させ、その間にイランの体制転換の可能性を追求することを考えているのであろう。

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