「優勝はまずない」森且行 奇跡のSG制覇で〝SMAP再結集〟の約束

2020年11月04日 11時30分

万感のSG制覇となった

 元SMAPの森且行(46=川口)が3日に行われた川口オートレースのSG「第52回日本選手権」の優勝戦で悲願のSG初Vを達成し、1997年にデビューしてから24年目にして権威ある最高峰のタイトルを獲得。レース後は「仲間たちとの約束をやっと守ることができました」と神妙な面持ちだった。人気先行とやゆされてきたオート界のアイドルレーサーがようやく頂点に上り詰めた舞台裏をリポートする。

オートレース界には年間5つのSG(スーパーグレード)があり、その中でも今大会の日本選手権は唯一、全レースハンデなしで行われるため実力日本一決定戦として認知されている権威ある大会だ。

 森は初日からエンジンを仕上げ、連日力強い動きを披露。①③②②着の成績で勝ち上がった。オートは他のギャンブルとは異なり、雨の巧拙がはっきり出る競技で森は典型的な雨巧者。準決勝戦が行われた2日も降雨の影響で湿走路になったのが優勝戦進出の大きな後押しとなっていた。

 優勝戦が行われた3日も車券好きの記者の間では「雨が降らない限り、森の優勝はまずない」との声が大勢を占めていた。

 決戦となった優勝戦は公式発表こそ濡れた部分がところどころに残るブチ走路だったが、選手目線で見れば完全な良走路。当然のように森の頭は万車券がズラリ並ぶ人気薄だった。

 ナイター照明がともった中、優勝戦の号砲が鳴った。スタートで1番人気を背負った鈴木圭一郎(25)が飛び出し、森は不利と言われる外枠の7号車から会心のSを切り2番手につけた。前を走る鈴木と森の実力差を考えれば、抜くのは至難の業と思われたが「神様がいましたね」と勝者に言わしめたアクシデントが待っていた。

 一時は荒尾聡(39)に抜かれて森は3番手に後退したが、6周3角で前を行く鈴木と荒尾が接触して落車。うまくそれをよけた森が労せずして先頭に立ったのだ。あとは猛追する金子大輔(40)を振り切ってゴール。「まさか」の悲願達成に場内はこれまでのSG優勝戦後にはなかった異様な熱気に包まれた。

 ロッカーに帰ってくると25期同期の仲間に胴上げされ、破顔一笑。「事故レースっていうのもあるからまだ実感は湧かないですけどね。ただ、見せ場をつくるためにもスタートだけはいける自信があった」とドヤ顔で振り返った。

 体重が大きく影響するマシンスポーツとあって今回のために極限の減量に取り組んでいた。通常より4キロ落として57キロで出走。177センチの身長を考えれば「ホントにきつかった」というのも容易に想像できる。

 現在の実力はS級25位。これが4回目のSG優勝戦進出となったが、勝ち切るのは厳しいことは本人も自覚していた。

「絶対無理だと思ってました。実際には(笑い)。もう40歳超えたあたりから体力がだんだん衰えてきてたし…。ただヤル気だけは全然あったんでね。やっぱり神様っているんですよね」と満面の笑みで周囲に訴えかけていた。

 3連単の配当は57万8880円。オート界70年の歴史の中でSG優勝戦最高配当となった。「最後まで諦めちゃいけないっていうのをお客さんに見てもらえましたかね。言葉では絶対無理、といってもどこかにチャンスはあると思ってたし、新人よりも練習に出て、ずっと努力だけは続けてきた。努力は裏切らない」としみじみと振り返った。

 オート界の歴史を塗り替え、今後の盛り上がりを予感させる戴冠劇。「昔の職場の人間と“日本一になる”と言って出てきたので、約束をやっと守れた」とSMAP時代の仲間にメッセージを送った。

 改めて振り返れば、人気絶頂期にSMAPを辞めてオート業界に飛び込んだのは1996年のこと。その社会現象となった騒動から四半世紀の時を経て集大成を飾った今こそ、ファンの前で昔の職場の仲間との“再集結”の機運が高まるのは間違いない。

☆もり・かつゆき 1974年2月19日、東京都生まれ。身長177.7センチ、体重59.3キロ。川口オート所属。25期生。97年に川口でデビュー。2004年の全日本選抜(川口)でSG初優出。これまでの主な獲得タイトルは13年・GⅠキューポラ杯(川口)、14年・GⅡ川口記念(川口)。同期には永井大介(川口)、若井友和(川口)、有吉辰也(飯塚)らがいる。現用車はハカ。