【直撃!エモPeople】月刊「創(つくる)」が創刊50周年を迎えた。最近では相模原障害者殺傷事件の植松聖死刑囚など、事件当事者の手記を掲載する独自の誌面づくりで知られるが、これは40年にわたり、トップを務める篠田博之編集長(70)が紆余曲折の末、たどり着いた編集方針の一つだ。“生涯編集者”篠田氏が半生を振り返り、秘話を公開した。
1970年代、月刊誌創刊ブームが起き「新左翼系雑誌」と呼ばれた「現代の眼」「流動」「構造」などが注目を集めた。「構造」が休刊し誕生したのが「創」。入社わずか11か月後、29歳で6代目編集長に就任したのが篠田氏だ。
「私が手がけた『音羽VS一ツ橋』などメディアの内幕を特集した号が話題になって部数が伸び、大手資本でない独立系雑誌を維持するにはターゲットをある程度絞らざるを得ないとメディア批評路線に変えました。でも、編集長になって1年後には発行元から休刊を言い渡されたんです」
休刊宣告の理由は82年の商法改正によって広告が入らなくなったため。納得できなかった篠田氏ら編集者3人は「創出版」を設立し「創」を譲り受けた。「3人で200万円ずつ出し合い、資本金600万円でスタートしたけど、半年で使い切った。みんな無給でしたが、『無給でいいので編集に関わりたい』という学生もやってきて、活気はありましたね」
一方、別冊として83年に創刊した「マスコミ就職読本」がヒット。ゲリラジャーナリズムの手法で、企業が隠したい情報も掲載し、マスコミ志望学生のバイブルとなった。
のちにお家芸となる事件当事者の手記掲載は86年、ロス疑惑事件の三浦和義氏(2008年没、享年61)の連載からだ。
「85年に逮捕された三浦さんをめぐっては、報道のあり方が問題になっていたので、三浦さん側から見たメディア批評を依頼し、1年半連載した。大手メディアがやらないことをやるという方針、“逆張りの発想”はその後も続き、メディアに叩かれている側にも言論の場を保障する姿勢はそこから始まりました」
以降、連続幼女誘拐事件の宮崎勤死刑囚(08年死刑執行、享年45)や和歌山カレー事件の林真須美死刑囚(60)などの手記を相次いで掲載、相模原障害者殺傷事件の植松聖死刑囚(31)などとのやりとりは今も続けている。
その方針を篠田氏は「彼らを擁護するわけではなく、指弾されている側の主張も伝えることで事件の背景や動機の解明に役立つ。林真須美死刑囚のように無罪を主張して再審請求を行っている事例はもちろん、そうでない場合も当事者に当たることは必要。相模原事件のように裁判で真相が十分に解明されないケースもあり、それを探っていくのはジャーナリズムの役目だと思う」と話す。
付随するライフワークが「加害者家族」だ。オウム真理教事件後、一時は教祖の後継者ともみられた三女アーチャリーら子供たちのインタビューも何度も手がけた。
「最初に長時間インタビューしたのは96年、彼女が13歳の時。教団は解体されたが、その後も彼女は毎日、公安に追われる生活で、それをひょうひょうと語る姿にはビックリでした。その後、彼女は独学で3つの大学に合格したが、元教祖の娘という理由で合格を取り消された。もちろんオウムの犯罪は許せないが、犯罪者家族という理由で学校に行けないとか、大学合格を取り消されるというのはひどすぎると、大学を訴えた裁判の経緯を取り上げるなどしました。幸い、彼女は裁判の結果、大学に入学できました」
薬物事件で何度も逮捕された田代まさし(65)、女優三田佳子の次男、元五輪体操選手の岡崎聡子氏などの場合も本人や家族の相談相手にもなった。田代、岡崎両被告の裁判では情状証人として出廷。三田の次男とは一時、マンションで一緒に生活して更生を手助けした。
今後の「創」についても聞いてみた。
「今の出版界で雑誌を続けるのが大変なのは明らかで『月刊現代』『諸君!』など大手出版社は次々と月刊誌を休刊させていった。それを見ていて逆にやめにくくなった。赤字だからやめるという経営方針はわかるが、最近は相模原事件のような大きな事件でも継続して追っている雑誌がほとんど見られなくなった。このまま雑誌ジャーナリズムをなくしていいのかという思いがある。『創』はもともと、オーナーが儲からないから休刊すると言い出したのに納得できなくて始めたから、経済的理由でやめるのは“初心に反する”。連載陣などの激励でなんとか続けており、体力が続く限りは続けるつもり。でも今、紙の雑誌を続けるのは大変だから後継者はいないし、私がやめるときは『創』も休刊でしょうね」
篠田氏の温和な表情、語り口に隠れた熱い信念で作られる「創」だけにまだまだ話題を振りまいてほしい。
☆しのだ・ひろゆき 1951年9月10日生まれ。茨城県日立市出身。一橋大卒業後「月刊日本」などを経て、80年、月刊「創」編集部に入り、81年編集長就任。82年、発行元が休刊を決定。編集者3人で創出版を設立。83年「マスコミ就職読本」創刊。94年、代表取締役。ロス疑惑の三浦和義氏の連載をはじめ、オウム真理教麻原彰晃教祖の三女、和歌山カレー事件の林真須美死刑囚など、事件当事者や家族と接触し、その主張を掲載。メディア批評家としてはYahoo!に個人アカウントで執筆中。著書に「ドキュメント死刑囚」「生涯編集者」「皇室タブー」など多数。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。












