歌舞伎俳優の尾上松也(36)が15日、東京・千代田区の大手町三井ホールで開催中の新感覚デジタルアート展「巨大映像で迫る五大絵師―北斎・広重・宗達・光琳・若冲の世界―」(9月9日まで)のプレス発表会にアンバサダーとして出席した。

 同展では葛飾北斎の「富嶽三十六景」、俵屋宗達と尾形光琳の「風神雷神図屏風」など名作中の名作を巨大映像として会場のスクリーンに映し出す。

 尾上は日本美術の傑作と歌舞伎との共通点について「絵も、歌舞伎も、先人の魂を受け継ぐというところでは一緒」と話した。

 コロナ禍により、歌舞伎などの舞台やコンサートを開催する時は、客席数を減らしたり、掛け声禁止という制約を設けざるをえない。歌舞伎の演目に使用する小道具も紫外線を用いた除菌機器を使用するなど、細心の注意を払っている。

 尾上は「文化芸術というのはこれまでもずっと我々の支えになってきた。今は制限がかかってなかなか難しい状況ではあるけど、この情熱、魂は未来永劫ずっと紡いでいきたい。会場へぜひ見に来ていただき色んな方にお声がけいただけたら」と呼びかけた。

 歌舞伎関係者は「コロナにより演劇や舞台、芸能分野は大きな打撃を受け、4度目の緊急事態宣言で瀬戸際まで追い込まれた。苦しい現状を乗り切ることもそうだが、関係者一同が恐れているのは今まで定期的に舞台に足を運んでいた人たちが、コロナが収まっても戻らないこと。今は歌舞伎や舞台を見に行くという習慣が途絶えてしまっているわけだから」。

 本業の歌舞伎ではなくとも松也が必死に来場を呼びかけたのは、業界全体で共有している危機感からだ。