大阪府の吉村洋文知事(46)が30日、府庁で定例会見を開催し、会場の利用許可が取り消された「表現の不自由展かんさい」について言及した。

 同展は大阪市の大阪府立労働センター「エル・おおさか」で7月16~18日に開催予定だった。しかし、抗議が相次いだため、会場の指定管理者は利用者らの安全が確保できないとして、25日付で利用許可を取り消した。主催者側はこの日、指定管理者に取り消しの撤回を求め、大阪地裁に提訴。処分の効力停止も申し立てた。

 吉村氏は「(エル・おおさかの)中には常設の保育所も入っている。そのような施設で行われて本当に大丈夫なのかと懐疑的に思っている。どちらかといえば反対です」と指定管理者の判断に同調しており、訴訟については「法治国家ですから、申し立ては表現の不自由展側の皆さんの判断。法廷の場に移れば、指定管理者が適切に対応していく」と述べた。

 公の施設の利用不許可を巡っては、最高裁判例で「明らかに差し迫った危険の発生が具体的に予見されることが必要」と示されている。

 吉村氏は「これまでの表現の不自由展で起きたことや、大阪で開催するという中でさまざまな抗議や不安の声があった。施設には常設の保育園もあり、そうした施設を考えた場合、差し迫った危険が生じるというふうに思っている」と語った。

 2019年に愛知県で開催された国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」の際に、「反日プロパガンダ」と指摘していた吉村氏だが「僕自身の評価は変わりません」とキッパリ。

「僕自身は愛知で行われている時に否定的な意見も言っている。だからといって、施設利用は認めないのはあってはならないし、表現の中身に踏み込むつもりはない。でも、かなり不快に思う人はたくさんいる。その人たちにも理由があって、そこでぶつかることもありえる。表現の不自由展をやってる方が自分たちが正義だと思っているのは分かるが、そうじゃない人の正義もある」と改めて主張した。