2019年4月に東京・池袋で起きた暴走事故の被害者遺族が、自動車処罰法違反(過失致死傷)の罪に問われている飯塚幸三被告(89)に対して絶望を感じている。27日、東京地裁で被告人質問が行われたが、言動からまったく反省のそぶりがうかがわれなかったというのだ。

 妻と娘を失った松永拓也さんは公判後の記者会見で「一言で言うとむなしさと悔しさ」と声を絞り出した。飯塚被告は公判で「アクセルを踏んでいないのに加速した」「車が制御できず恐ろしく感じ、パニック状態になった。ブレーキを踏んだが減速せず、ますます加速した」とこれまで通り、自身に過失はないと訴えていた。

 松永さんは「私はドライブレコーダーの映像が事実だと思う。なかなか自分の考えを変えられない人なのだろう。加害者の記憶と事実にかい離がたくさんある。しかし、自分にとって大事なことだけは間違いないと言うのは理解ができない」と指摘。ドラレコで事故当時の映像が残されているにもかかわらず、記憶にこだわり続ける飯塚被告に首をかしげた。

 飯塚被告におかしさを感じた点はまだあるという。飯塚被告は亡くなった被害者に対して「冥福をお祈りする」という趣旨の話もしていたが、松永さんは「そういうのは最後でいい。(被告は)自分は悪くないと言っている。無罪主張で罪がないと言っているんです。悪いと思っていないなら謝ってほしくないし、ご冥福を祈ると言ってほしくない」とキッパリ。謝罪に中身が伴っていないわけだ。

 松永さんは「物証やドラレコがあるのに、自分は間違えないとよく言えるなと。むなしいや苦しいを超越してあきれてしまう。こういう人なんだろうな」と無念の表情を浮かべた。

 次回の公判では松永さんが直接、飯塚被告に質問する機会がある。「やれるだけのことはやったと言えるようにしっかり準備したい」と話している。