ポストコロナを生き抜くために必要な知恵は本紙とプロレスだった!? 本紙おなじみの流通ウォッチャー・渡辺広明氏(53)と同じくニュース番組「Live News α」(フジテレビ系)でコメンテーターを務めている経営コンサルタント・松江英夫氏(49)が緊急タッグを結成し、東京・江東区の東京スポーツ新聞社を訪れた。ビジネスの現場と理論を知り尽くした2人が自由にしゃべれば「働き方」はこんなにも楽しくなる!

 ――まずはニュースコメンテーターとして今年の振り返りをお願いします

 松江英夫(以下松江)ニュースでも何度か使っているんですが、私は「両極化」がキーワードだと思います。例えば国際情勢における「米国」と「中国」。働き方として「リモート」と「リアル」。また、SDGs(=持続可能な開発目標)のような「社会価値」と「経済価値」といったような一見相反することがぶつかりながらも、互いにその勢いを増幅させています。

 渡辺広明(以下渡辺):どちらが欠けてもいけない。そしてコロナショックがさらに追い打ちをかけましたよね?

 松江:はい。二者択一があり得ない時代になってきたので、世の中を複眼思考で捉えていく必要があります。

 渡辺:朝は日経を読み、夜は東スポを読む感じですね(笑い)。

 松江:おっしゃる通り。実はそもそも東スポ自体が虚と実が混じっているというか、両極化の要素を持っているんです。見出しだけで「読んでみたい」と心を動かすのはすごいこと。好奇心や興味を購買行動へとつなげるのはシンプルながらインパクトがあります。私自身、暗いニュースでもできるだけ前向きなコメントを心がけていて、東スポ的な発想はとても参考になっています。

 ――東スポとの出会い、そして活用法

 渡辺:心を動かすといえば、東スポと関係が深いプロレスも似ている気がします。松江さんは大のプロレス好きだとか?

 松江:はい。私が人生で初めて触れた新聞は、1983年6月2日の猪木対ホーガン戦が1面の東スポでしたから!

 渡辺:猪木が失神KOされたのは衝撃だった。

 松江:すごかったですね。私はプロレスにもビジネスに通じる共通項があると思っていて、勧善懲悪のプロレスの世界を際立たせているのは“受け身”の技術なんです。ただケガを防ぐだけでなく、相手の技を受け止めることで説得力を持たせる。普段はあまりポジティブな意味で使われる言葉ではありませんが、サービス業でもまずお客さまのニーズを受けた上でどう対応するかが問われるので、ビジネスも“受け身”から始まるんです。総合格闘技なら秒殺KOでもいいんですけどね(笑い)。

 渡辺:わかります。一方的な商談なんてうまくいくワケがない。あとは意外性も大事ですよね。基本的にはベビーフェースがヒールに勝つんだけど、勝利までの過程が面白いし、時にファンの予想を裏切る想定外が待っている。悪役が主役を引き立てるという意味では大ヒットドラマ「半沢直樹」も似た構図でした。

 松江:はい。人の心を動かした先にはヒットが待っているといっていいでしょう。

 渡辺:それにプロレスラーは“受け身”がうまいから現役引退後も幅広く活躍し続けられる人が多い気もしています。昔はあれだけキレまくっていた長州力がツイッターを始めるなんて想像もできなかったけど、今やすっかり順応している(笑い)。

 ――SNSが身近になり、一般人にもセルフプロデュースが求められる時代になった

 松江:そうですね。もちろん団体の意向もありますが、プロレスラーは個の魅力を発信し続けることで、最終的には勝ち負けを超えて応援してくれるファンを集めているんですよね。つまりセルフプロデュース、これもプロレスとビジネスの共通項です。ということで今日は私も組織の人ではなく、一個人として自由にしゃべらせてもらってます(笑い)。

 渡辺 これからの副業時代は、ビジネスマンも上がる“リング”が増えていきますよね? となると“リング”が変わったときにも実力を発揮するためにはやっぱり最初の“受け身”が大切になってくる。

 松江:その通りです。これから先は人生100年時代とも言われていますから。今置かれている組織の中で“受け身”を取りながらも、一個人として人生を生き抜くセルフプロデュースが大事。我々はまだまだ東スポとプロレスから多くを学び取ることができるはずです。

 渡辺:グレート小鹿みたいに生涯現役を目指しましょう!

☆まつえ・ひでお=1971年生まれ。埼玉県出身。早稲田大学大学院修了。経営コンサルタント。企業経営、大学の客員教授、メディア活動など広く展開。「Live News α」(フジテレビ系)の金曜コメンテーター。著書に「両極化時代のデジタル経営」「自己変革の経営戦略」(共にダイヤモンド社)など。浦和レッズサポーター。

☆わたなべ・ひろあき=1967年生まれ。静岡県浜松市出身。「やらまいかマーケティング」代表取締役社長。大学卒業後、ローソンに22年間勤務。店長を経て、コンビニバイヤーとしてさまざまな商品カテゴリーを担当し、約700品の商品開発にも携わる。著書に「コンビニが日本から消えたなら」(KKベストセラーズ)。