本紙昨報の飼育小屋から脱走した子ヤギ、崖の上の〝ポニョ〟に、人々が夢中になっている。

 千葉県佐倉市の京成線沿いの斜面に約2か月間もすみ着いているポニョを見ようと、16日も多くの人が集まった。この日までに行動範囲を広げ、斜面に生えている草をひたすらむさぼり食った。

 すみかとしている斜面の真下の線路には、京成電車が頻繁に行き来する。乗客に加え、車掌もポニョの愛らしい姿を観察する場面も見られた。

 現場には子供と一緒の家族連れや、お年寄りたちが集結。子供が「メェ~」と鳴きまねすると、ポニョは斜面の下の線路付近までやって来た。

 まだ生後5か月。野生の感覚が残っているからか、急な斜面から落下することなく、優雅に駆け巡った。起きている間は常にエサの葉っぱを探し求めていた。睡眠をとる時は、斜面のはしごのかかった部分に身を置き、外敵から身を守っているようだ。

 約1か月半にわたって様子をウオッチしてきた近所に住む50代の女性は「最初に見た時よりも、だいぶ大きくなって成長しているのを感じる。ここの草を全て食べるのでは」と語った。

 佐倉市内のカフェ「そばカフェ301」では、この〝ヤギ騒動〟にあやかったTシャツやマグカップなどのグッズを販売している。売り上げは、ヤギを捕獲するための費用などに活用してもらう予定だという。

 付近の農産物販売店には見物客が足を運ぶようになったという。店で働く50代の男性は「こうしてお客さんが来てくれるのは素直にうれしい。でも、近隣住民としては、ヤギが落ちたら危ないので早く捕獲してもらいたい」と語った。

 コロナ禍で今、社会の空気は重くなっているが、街には少しだけ明るい空気が流れている。