高知県須崎市のゆるキャラ「しんじょう君」のアニメ化はホントに実現するの!? 同市が「しんじょう君」の著作権を侵害しているとして「ちぃたん☆」を管理する芸能事務所に、デザインや着ぐるみ使用停止の仮処分申請を東京地裁に行ったことが騒動になっている。その中で、東京地裁が「しんじょう君」のアニメ化計画に“ダメ出し”していたことが判明。もし実現しなければ、すでに出資している血税3631万円はいったい…。今、須崎市は大ピンチに立たされている――。

 ニホンカワウソがモデルの「しんじょう君」は、2013年4月に須崎市の公式キャラクターとして誕生した。

 一方の「ちぃたん☆」は、もともとゆるキャラではなく、個人のペットである本物のコツメカワウソだった。17年5月に飼育する様子をSNSで発信すると爆発的人気を集め、地方局で冠番組まで始まるほどだった。18年1月、本物のコツメカワウソが同市の観光大使に任命されると、本物をモデルにした同名のゆるキャラ「ちぃたん☆」も観光大使を名乗るようになった。

「当初、須崎市と『ちぃたん☆』を管理する芸能事務所のクリーブラッツ社(ク社)は、関係者を通じて一緒に活動していました。須崎市が『ちぃたん☆』人気にあやかろうとしたのは間違いない。だからこそ、観光大使を委嘱したんです。『しんじょう君』と『ちぃたん☆』は似通っていますが、デザイナーを紹介したのが須崎市なのですから、当然ですね」(「ちぃたん☆」関係者)

 ところが、須崎市が今年2月、ク社にデザインや着ぐるみの使用停止を東京地裁に申し立てて、両者は裁判に突入してしまう。9月20日、須崎市の主張はすべて却下されたものの、同市は即時抗告。いまだ争う姿勢を崩していない。

 問題なのは「しんじょう君」のアニメ化計画のズサンさが法廷で明らかになったことだ。

 須崎市は定例会見等で「国内外の企業から出資を募り、日本だけではなく、中国・台湾・香港をはじめ海外での放送を目指す」としている。「ダンデライオンアニメーションスタジオ」(ダ社)と原作共同開発契約を結んでいるのだが、その制作費は何と4億5000万円! 須崎市によると、そのうち須崎市は原作開発費として3000万円、商標登録に関わる費用として631万円を18年度の補正予算に計上したという。

 だが、これが極めて眉唾モノだという。アニメ関係者は「原作開発費とは、キャラクターデザインやプロットなどの素材を作成する費用のことですが、3000万円はハリウッドの有名コンテンツをアニメ化するぐらいの高額費用です。フルCGでもマックス500万円ではないでしょうか。事実、『ちぃたん☆』は50万円ほどで済んでいるはず。アニメ事情に疎い須崎市は、これを精査せずに出資している可能性が高い」と指摘している。

 確かに、昨年12月14日の総務常任委員会の議事録を読む限り、議論不足は否めない。実は、東京地裁も「4億5000万円ものお金が集まり、国内外で活動するというが、それに関する詳細な企画書、試算書を出しなさい」と須崎市に指示した。しかし、同市は抽象的な資料しか提出できず、裁判所から「裏付ける客観的、具体的な資料がない」とダメ出しされた格好だ。もしアニメ化できなければ、血税3631万円はムダになる可能性が高い。

 それだけではない。須崎市は「ダンデライオン社とともに大手企業と『しんじょう君』のゲーム化やアニメ化の案件を進めていた。『ちぃたん☆』の過激な動画のせいでなくなった」と主張したが、ク社がこの企業に確認したところ、中止になったのは、ダ社が具体的なビジネス試算書を提出していなかったことが原因だった。つまり、計画があやふやな上、行政が司法の場で虚偽の陳述をしたということだ。これはもう前代未聞の不祥事と言える。

 本紙は、ダ社と須崎市に対し、事実確認したところ「須崎市とクリーブラッツ社の裁判なので、弊社がお答えするのは難しい」(ダ社ライツマネジメント室)、須崎市元気創造課も「係争中の案件のため、個別の回答は差し控えさせていただきます」とした。

 来年1月26日には須崎市長選が行われる。楠瀬耕作市長(59)は「しんじょう君」を推進してきただけに、市民に納得いく説明をしない限り、影響は避けられそうにない。

【ことごとく却下される須崎市の主張】今回の裁判で、須崎市は虚偽陳述だけではなく、荒唐無稽な主張をしているという。

「『ちぃたん☆』側が商業活動を行う上で須崎市の許可証を求めたとき、元気創造課の担当職員は『協議の結果、特に許可の必要はない』と回答したんです。それなのに、裁判では須崎市が『決裁権のない市の職員が勝手にやったことなので無効』と主張したんですよ」(事情通)

 行政の窓口に出てきた担当者の発言が無効となれば、何を信じればいいのか…。当然、須崎市の主張は却下された。

 また、同市は「ちぃたん☆」の過激動画によって、「『しんじょう君』の価値が毀損された」「市にクレームが来た」と訴えるが、実は「しんじょう君」も過去に過激動画を配信していたことが判明。「田畑に人を生き埋めにしたり、流鏑馬(やぶさめ)と称し、車の中からエアガンで的を撃ったりしています」(同事情通)と、完全に“ブーメラン”となっている。