人の業を描き続け、一作ごとに最高作を更新し続ける吉田恵輔監督(51)の最新作「mentor(メンター)」(10月16日全国公開)。主要キャストである綾野剛(44)、磯村勇斗(34)、そして単独での映画初出演となるAぇ! group・末澤誠也(32)の3人について、監督に話をきいた。

 15年前、子供だった巧海(末澤)と龍之介(磯村)の花火遊びでアパートが全焼。妻を抱きかかえ慟哭する埜本(綾野)を呆然と見つめる2人。物語は巧海が埜本と運命の再会を果たすことで動き出す。恐怖や共感、違和感、哀しさに加え、笑えないのに笑えてしまう監督のブラックユーモアも炸裂。「人生は、ちゃんと狂っていく。」とはどういう意味なのか、観客はカオスな感情と最後まで向き合うことになる。

 ――キャスティングについて伺います。まず綾野さんですが

 監督 綾野さんは一度一緒にやりたかったんです。綾野さんて本当に気持ち悪くも、おっかなくも、負け犬で弱そうとか、いろんな見え方ができる。埜本は多面的に見えるといいと思っていたので、綾野さんがいればまず間違いないだろうと。

 ――磯村さんは

 監督 この1年で一番上手いと思うぐらい。今回受けの芝居が多いんですが、これが難しい。受けって手応えがないから芝居が大きくなって、滑るんです。でも磯村くんはその微妙なさじ加減が天才的に上手い。

 ――末澤さんは映画単独初挑戦の上、磯村さんとW主演の大役です

 監督 素直でいい子で言われたことへの再現性がすごい。彼はプロデューサーの紹介だったけど、ばっちりだった。

 ――3人のコンビネーションは

 監督 3人が揃う場面って大体面白いんです。で、やっぱり末澤くんがちょっと異物なんですよ。綾野さんと磯村さんは役者としてのキャリアがあって落ち着きをもって演じている。そこに末澤くんが、全力フルスイングでアホなことを迷いなく真剣にやってる。2人が笑いをこらえられないほどで、その化学反応がめっちゃ面白かったですよ。

 ――本当にいいトリオ

 監督 やっぱりベテランの中に異物を入れることによって刺激が生まれる。逆にいうと異物だけで撮っちゃうとバラバラになっちゃう。だからエッジになる人をいれると化学反応が起きる。そういう組み合わせは僕の映画では相当、多いです。

 ――脚本については

 監督 いつもはテーマが決まっていてそれに即した物語を書くんですが、今回は事件(火事)を書いて、そこから何度も書き直しました。出来上がってから、俺、こういうテーマを書きたかったんだと気付きましたね。

 ――そのテーマとは

 監督 結構ネタバレになってしまう(笑い)。でも少し言うと、人は何をしたら反省したって言えるのか、前に進むってどういうことなのか、とか。

 ――監督にとってどんな作品になりましたか

 監督 人間がいかに愚かでみっともなくて小さくて、でもそれが人であって愛おしいじゃん、っていう映画を作る、俺の集大成って感じです。